世界トップ企業が加盟する「RE100」、日本企業が「再エネ100%」を達成するには?

山口岳志 日立コンサルティング エネルギーコンサルティング本部 マネージャー,スマートジャパン

2019年01月18日

「パリ協定」以降の企業の気候変動対策について解説する本連載。第4回は日本企業の加盟も増えている国際的な環境イニシアチブ「RE100」について解説する。

本稿では、2015年に成立した「パリ協定」以降における企業の気候変動対策の動きについて概説し、各種イニシアチブの紹介や、それらが設立に至った背景、そして実際の企業の動きについて実例を交えて紹介していきたい。その上で、日本企業が具体的にどのようなアクションを取り得るべきか、どのような対外発信を行い得るのかを考えていきたい。

前回はパリ協定が定めた2℃目標を達成するための企業の自発的な取り組み(イニシアチブ)であるSBT(Science Based Target)について、認定取得に向けた手順やポイントを紹介した。今回はSBTとともに注目されているRE100について、特に日本企業が取得するためのポイントについて解説する。

本連載で解説予定の制度/イニシアチブ

SBTは「目的」、RE100は「手段」

「RE100」のロゴ 出典:The Climate Group

RE100は、国際環境NGOのThe Climate Groupが、2014年9月(SBTの発足と同時期)に開始したイニシアチブで、自社の事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギー(再エネ)にする取り組みである。アップル、アマゾン、J&J、JPモルガン、BMWなど、欧米のリーディング企業の多くがRE100に参加しており(9月末時点での米企業時価総額トップ10のうち、まだ未参加の企業はバークシャー・ハサウェイとエクソンモービルのみ)、2017年4月にリコーが参加したことにより日本企業の参加も加速。ソニー、富士通、積水ハウスなど日本を代表する大手企業も次々に参加を表明している。

公開情報をもとに筆者が作成。
米時価総額ランキングトップ企業のほとんどがRE100に参加していることがわかる

SBTもRE100もESG投資における重要な指標であるが、「脱炭素」という視点でみた場合、SBTは「目的」、RE100は「手段」と位置付けることができる。電力を100%再生可能エネルギーにすることは、日本においてはハードルの高い取り組みだが、達成できれば電力消費由来のCO2排出量(Scope2)を0にできる。

RE100ほど有名ではないが、The Climate GroupはRE100の他に電気自動車の利用を推進するEV100(日本ではイオンとアスクルがRE100と同時に加盟)、事業のエネルギー効率を倍増させるEP100(省エネ効率を50%改善など、日本では大和ハウス工業が参加)も推進している。これらのイニシアチブは企業がリーダーシップを取って、パリ協定における2℃目標達成のための積極的な推進をもたらす手段として位置付けられている。

RE100においては、参加と同時に100%を達成する年も宣言する。例えば、日本で最初にRE100参加を表明したリコーは、2030年までに最低でも全電力の30%を再生可能エネルギーで賄い、2050年までに100%にする、という内容で宣言を行った。多くのRE100企業が、数年後あるいは10年、20年といった将来に向けて再エネ比率を上げていき、なるべく早い時期に100%を達成する計画を立てている(欧米ではアップルやマイクロソフトのように、既に100%達成した企業もある)。

RE100の取り組みは、宣言を行った企業だけでなく、そのサプライヤーに対しても波及する。有名なところでは、アップルは部品の供給元に対して再エネの導入を呼び掛けており、世界中で23社ほどのサプライヤーがアップル向けの製品製造にかかるエネルギーを100%再エネにすることを公約している。アップルのサプライヤーは日本国内にも50社ほどあるが、このうちイビデン、太陽インキ製造がアップル向け製造における再エネ100%を宣言している。

さて、実際問題として日本企業がRE100を達成するにはどのようにすればよいだろうか? 日本では、大手電力会社が販売する電力は、天然ガスや石炭などの化石燃料を用いた火力発電をメインにしているため、通常の方法で再エネを調達することは難しい。RE100では再エネ電力調達の手段として「RE100 CRITERIA」を発行しており、その中でいくつかの調達オプションを例示している。その中で、大きく分けて日本企業が取り得る方法としては、

●方法1.敷地内に設置した太陽光発電設備など、自社が保有する発電設備による自家消費
●方法2.他社からの再エネ電力購入
●方法3.グリーン電力証書など証書の利用の方法がメインになる。

この3つが挙げられる。現在140を超える企業がRE100に参加しているが、ほとんどの企業が上記の手段のうち2つ以上を組み合わせることによって再エネ比率100%を達成、あるいは達成しようとしている。

100%再生可能な電力を達成するにあたって取り得る手法。RE100 Technical Working Group「RE100 CRITERIA」(http://media.virbcdn.com/files/a2/0b0b5f7dd04b135f-20150331_RE100Criteria_April2015.pdf)を基に筆者作成

以下では、この3つの方策の具体的な内容と金額感について解説する。

1.自社が保有する発電設備による自家消費

前ページの「RE100 CRITERIA」にある複数の再エネ電力の調達手法のうち、最もわかりやすいのは自社で再エネ発電設備を導入する方法だろう。RE100のために大規模な設備投資を行っている代表的な企業として、初期からRE100に参加しているIKEAが挙げられる。IKEAでは2009年以降、風力発電に14億ユーロ、太陽光発電に3億ユーロを投資してきた。これにより自社の建物などに133MWp(メガワットピーク)、75万枚の太陽光パネルを設置し、12カ国で416基、947MWpの風力発電を所有している。2017年は両者合計で2388GWh(ギガワット時)を発電したが、これは同社の使用電力の73%に相当する。
 

2017年の「IKEAサステナビリティレポート」より 出典:「SUSTAINABILITY SUMMARY REPORT FY17」(https://www.ikea.com/ms/sv_SE/pdf/sustainability_report/IKEA_sustainability_summary_report_FY17.pdf

アップルは、2018年4月に全世界の事業運営で消費する電力を再エネ100%にしたと発表した。2017年に新設された新社屋は17MW(メガワット)の屋上太陽光パネル設備や、4MWのバイオガス燃料電池を保有している。他にも製造拠点がある中国に複数の風力・太陽光の発電拠点、データーセンターがある米国各州にも再エネ設備を建設するなど、43カ国にわたるグローバルレベルでRE100を達成してる。

実は、RE100に加盟する152企業(2018年10月1日現在)のうち、マイクロソフトなど10を超える企業が再エネ100%を既に達成しており、「再エネ100%達成」は、アップルが最初の企業というわけではない。しかし、その多くはこれから述べる、他社からの再エネ電力購入と証書利用の比率がまだ大きく、自前の設備で自社の消費電力のほとんどを賄う規模には達していないのが現状だ。アップルの場合、調達した再エネのうち66%が自前設備のものである。

繰り返しになるが、RE100参加企業の当面の目標は、再エネ比率を期限までに100%にすることだ。後述するとおり、この目標を達成する一番の近道はグリーン電力証書などを用いる方法(方法3.)である。しかし、証書を用いて再エネ100%を達成しても、「新規の再エネ投資を創出しない」という理由で環境団体などから批判を受けてしまう場合がある。そのため、欧米のRE100参加企業は、証書を使って再エネ比率100%を達成しても、「自前の再エネ調達比率を高める」という次の段階のチャレンジに進み、またそのチャレンジに高い価値を置いている。ややこしい話だが、RE100を達成した企業の間でも、さらに差別化がおこりつつある。

設備導入における費用感についてだが、経済産業省の調達価格等算定委員会の意見書によれば注1、10kW以上の太陽光発電(自家消費)にかかるシステム費用は25~30万円/kWと考えられているようである。電力消費量の大きい工場などでは、敷地内に設置した太陽光だけで運用を行うことは難しいだろう。その場合は後述する、他社からの再エネ電力購入や、証書の利用を活用していくことになる。仮に消費電力のほとんどを自前の設備による発電で賄える場合でも、設置場所の日照条件、年間の電気代などによって投資回収の条件は変わってくる。

調達価格等算定委員会「平成30年度以降の調達価格等に関する意見(案)」(平成30年2月)(http://www.meti.go.jp/committee/chotatsu_kakaku/pdf/036_02_00.pdf

制度開始から10年になる「再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)」では、太陽光由来の電力買い取り価格は年々下落しており(2MW未満の産業用では18円/kWh)、一方で電力料金は値上がり傾向にあることから、最近は売電ではなく自家消費することを目的とした太陽光発電設備の導入が進んでいる。さまざまな事業者が自家消費型を対象とした太陽光発電設備のプランを提供している。自家消費を目的とした太陽光発電の設備投資(リース含む)には、国や自治体による助成金も期待できる。また、初期投資の圧縮のために、事業者が建物所有者の屋根を借りて太陽光発電設備を設置する、いわゆる「第三者所有モデル」活用する方法もある。これは次のページで解説する。

方法2.他社から再エネ電力を購入する

他社から再エネ電力を購入する場合、「小売り事業者の再エネ電力メニューを購入する」「発電事業者から直接購入する」の2通りが考えられる。前者の再エネ電力メニューは、東京電力エナジーパートナーの「アクアエナジー100」や四国電力の「再エネプレミアムプラン」などが代表的なサービスだ。2018年7月にRE100参加を表明した丸井グループは、みんな電力が提供する「ENECT RE100 プラン」を用いているが、これはブロックチェーン技術を用い発電源が特定された再生可能エネルギー電力の供給を実現するものだ。

その他、何社かの小売り事業者が、電源構成上は「再エネ100%」ではないものの、非化石証明書やグリーン電力証書などの仕組みを利用して再エネ100%と同等の環境価値をうたうプランを提供しているが、これは実質「方法3.証書の利用」と大差ないと考えてよいだろう。ちなみに、RE100参加のアスクルは小売り電気事業者のネクストエナジー・アンド・リソースが販売する「GREENa RE100 プラン」を導入しているが、これがまさにグリーン電力証書を活用したものである。

後者の直接購入に関しては、電力事業者が太陽光発電設備を消費者の敷地(屋根など)に設置し、そこで発電した電力の売却益を得る手法(第三者所有モデル)が代表的である。消費者は自らの使用分だけをこの発電設備から定額購入することができ、初期費用は少額かつメンテナンス費用が不要で再エネを調達できるメリットがある。アップルは、日本で使用する電力についてRE100を達成するためにこのモデルを用い、第二電力と共同で国内304カ所の屋根にソーラーパネルを設置する計画を進めている。注2

参考:第二電力 株式会社 ニュース(http://daini-den.co.jp/news/news20170924.html

日本でリコーに次いでRE100を表明した積水ハウスは、非常に興味深いモデルを提供している。同社が販売するZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)は、屋上の太陽光発電設備によりこれまで650MWを越える太陽光発電を供給してきた。余剰電力は今までFITによって電力事業者に買い取ってもらっていたが、2019年より順次FITが終了していくため、以降の余剰電力は積水ハウスが買い取ることになる。これにより、積水ハウスの顧客は「卒FIT」後も太陽光発電の利益を得られるようになる。

積水ハウスは2040年までに事業で用いる電力を再エネ100%にすることを宣言しており、このころまでに卒FITからの太陽光電力によって十分な再エネ調達が可能になる見込みだ。RE100を活用して顧客とWin-Winの関係を築いた好例といえる。
 

方法3.証書の利用

RE100達成のために設備投資を行うのは現実的ではない、または今すぐには難しいという考えもあるかもしれない。この場合、資金的にも、難易度的にも、最も簡便な方法が証書を利用する方法である。使用する電力は通常のもの(化石燃料を使用した電力を含む)でも、証書を別途購入することによって、制度的に「再生可能エネルギーと見なす」ことができる。日本の場合、この証書が3種類あり、制度が確立した順に「i)グリーン電力証書」、「ii)J-クレジット」、「iii)非化石証書」と呼ばれている。れぞれの特徴と概略を説明する。
 

i)グリーン電力証書とは?

グリーン電力証書は、2001年に民間主導で導入された制度である。バイオマス発電所などでつくられた再生可能エネルギーの環境価値のみを分離し、証書化して販売するもので、証書には「発電所の名称・場所」「発電時期」「シリアルID」などの標準化された認証情報が記載されている。再エネの出どころが明らかであるため信頼性が高く、RE100はもちろん、SBTの目標達成やCDPの回答にも用いることが認められている。もし十分な量を購入できたのなら、最も汎用性(はんようせい)が高い証書と考えてよい。

グリーン電力証書の制度開始以降、2014年11月までに認定されたグリーン電力設備の件数は1195件、設備容量の合計は約60万kWになる。電力証書の発行量については、日本全体で3.16億kWh(316GWh、2016年度実績)であった。これは同年度における全国の発電電力量合計(9941億kWh)の約0.03%であり、同年の再エネ発電量(約900億kWh)の約0.35%にしかならない。すなわち、グリーン電力証書の発行量は現在極端に少なく、入手が非常に困難な状況になっている。また、単価も高く、現在の相場では最低でも1kWh当たり3円以上を支払う必要がある。

一方、もし海外に拠点を持っているのなら、海外のグリーン電力証書は非常に安価(1kWh当たり0.1円以下である場合が多い)であるため、使い勝手がよい。海外のグリーン電力証書については、地域別に統一された認証システムを持つものが多い。北米ではRECs、欧州ではGOs、ラテンアメリカ、アフリカ、アジア圏ではI-RECといった証書を購入することができる。アジア圏などで使われているI-RECについては、オランダにあるNPO、The International REC Standard(http://www.internationalrec.org/)が、各国のグリーン電力証書のプロジェクト情報を管理するデータベースを運営しているので、自社の拠点がある地域をこちらで検索するのがよいだろう。RE100やSBTは海外拠点におけるエネルギー消費も報告の対象範囲になるため、まずは海外から証書の導入を考えるというのは、資金的にも非常に現実的な解であるといえる。

各国のグリーン電力証書 認証基準分布 出典:Renewable Energy/ Natural Capital Partners( https://www.naturalcapitalpartners.com/solutions/solution/renewable-energy

ii)J-クレジット(再エネクレジット)とは?

「森林整備によるCO2吸収」や「機器の効率化によるCO2削減」などのプロジェクトによって生まれた温暖化ガスの削減量を数値化し、市場で売買できる仕組みを「クレジット」と呼ぶ。京都議定書以降、日本では経済産業省管轄の「国内クレジット」環境省/農林水産省管轄の「J-VER」の2つのクレジット制度が並立していたが、2013年に3省が合同で「J-クレジット」制度を立ち上げ、現在まで運用されている。このうち「再生可能エネルギー導入」に関するクレジット(通称「再エネクレジット」)に限り、CDP、RE100でグリーン電力証書と同じように用いることができる仕組みが最近になって整えられた(クレジットはkWh当たりではなくCO2削減量のトン(t-CO2)単位で販売されるため、注意が必要)。SBTについては、まだ正式なコミットメントはないものの、SBTが準拠する先述のGHGプロトコルにクレジット活用に関する記載があるため、SBTでも用いることができるという前提で調整が進んでいるようである。

J-クレジットは、温対法によって電力事業者の排出係数(電力消費量1kWh当たりCO2を何kg排出したか、という値)の調整にも用いることができるため、2016年の電力自由化以降、新規参入した電力小売り事業者によってJ-クレジットが大量に買われており、需要が供給量を大きく上回っている状態である。年に数回、J-クレジット事務局によって政府保有クレジットなどの入札販売が行われているが、3年ほど前は500円/t-CO2程度だった平均価格が、現在では1700円/t-CO2(再エネクレジットの場合)ほどに高騰している。入札が行われるごとに入札者・入札総量ともに増加の傾向が続いており、今後も価格上昇は続くと思われる。

現在のJ-クレジット平均価格を1kWh当たりに直すと0.85円であり、グリーン電力証書に比較するとはるかに安い(後述する非化石証書と比較しても、J-クレジットの方が今のところ安価である)。発行量も、太陽光発電プロジェクトの認証量が年間およそ50万t-CO2(約10億kWh)程度あることから、グリーン電力証書の数倍の規模を持っている。J-クレジットはプロバイダを介して基本的に誰でも購入ができるため、価格的にも供給量的にも最もハードルが低い証書であるといえる。次回入札は2019年の2月頃に開催予定である。


iii)非化石証書とは?

非化石証書は、日本における非化石電源の比率を高めることと、FITに由来する国民の再エネ賦課金の負担額を軽減するため、2018年から国によって開始された新しい制度である。運営主体は資源エネルギー庁になる。注意点としては、一般消費者は非化石証書を購入することができず、電力小売事業のみが購入可能である。従って、一般消費者は通常の電力と非化石証書を組み合わせた「再エネ」電力メニューを購入することによって非化石証書を間接的に購入することになる(方法2.と同様)。

この非化石証書だが、グリーン電力証書やJ-クレジットと異なり、FITとして系統に流れた再エネ電力の環境価値を分離して証書化するため、発行量が非常に多い。2016年度のFIT電力買い取り量から試算すると約570億kWhの共有ポテンシャルがあると目されており、電力事業者であれば問題なく必要な量を調達できる。一方で、この非化石証書は今後非FIT電源(大型水力、原子力)を対象に含む予定となっていることから、RE100を推進するグローバル企業からは敬遠されているのが実情である。それ以外にも非化石証書には下記のようなデメリットがある。

●トラッキングシステムが整備されていないため、どこでつくられた再エネ電力なのかを示すことができない
●最低入札価格が1.3円/kWhと固定されており、この単価以下の価格では買うことができない
●制度が始まったばかりであるため、制度設計上、未決定の部分がある(原子力の扱いなど)

特に1番目については重要で、「標準化された認証情報の記載」がRE100のクライテリアに定められている以上、電源が特定できない現状の非化石証書の仕組みがそのままRE100に受け入れられるかは疑わしい。

各証書の価格を高い順に並べると グリーン電力証書(3円/kWh)>非化石証書(1.3円/同)>J-クレジット(0.85円/同)の順になる(2018年8月時点)。ただし、前述の通りJ-クレジットは今後価格上昇のリスクがあるため、将来にわたり価格が安定していると思われる非化石証書は、調達する側からみれば魅力的だろう。もしRE100に加入する予定がないのであれば、非化石証書は高い経済合理性を持った証書であるといえる。今後非化石証書を活用した「再エネ電力」メニューはさまざまな電力事業者から提供されるようになるだろう。

各証書の特徴(2018年8月時点の情報を基に筆者が作成

最終回となる次回では、多くの機関投資家がESG分野における企業価値を測る一つの重要指標としているCDPの回答に対し、どのようなアクションが取られているのか、最近の傾向を踏まえて解説する。