防災専門家に聞く 大阪府北部地震の対応

これまでの努力が奏功、業界の垣根を越えた連携を

2018年08月29日
        名古屋大学
        減災連携研究センター長
              福和 信夫 教授

6月18日に発生した大阪府北部地震では、約11万戸で供給停止としたが、1週間で復旧を果たした。今回の震災対応について、防災の専門家である名古屋大学の福和伸夫教授に意見を聞いた。

―1週間で約11万戸のガス供給を復旧した。このことへの評価は。
   過去の震災対応と比較しても今回の復旧はとても早かった。供給エリアを約164のブロックに分け、震度6弱だった高槻市、茨木市を中心とした2ブロックだけ供給停止し、全供給戸数のうち供給停止戸数を約5%(約11万戸)に抑えたことは素晴らしい。
これは阪神・淡路大震災(1995年)の発生以降、各地に多くの地震計を設置し、ブロックの細分化を進めてきた取り組みの成果だ。供給停止エリアを極小化することは、復旧効率を高めることになる。
(震度5以上の揺れで自動的に遮断する)マイコンメーターの普及によって、今回、地震による火災が起きていない。ガス漏れによる火災が起きていないことは非常に素晴らしいことだ。
また、大阪ガスの力だけでなく、日本ガス協会を通じて日本全国から約2600人もの人たちが集結するというガス業界の共助システムが確立されていることも大きかった。多くの人は大阪ガスからの支援要請がある前に出発準備を整えていたと聞く。そうした相互支援の仕組みが早期復旧につながった。

出所:大阪ガス


―「阪神・淡路」を教訓とした取り組みが生きたということか。

   ガス業界は阪神・淡路大震災を受け、さまざまな工夫を行ってきた。それによる効果は新潟県上越沖地震(07年)や東日本大震災(11年)で表れた。中でもそれが最も効果的に表れたのが今回の大阪府北部地震。今回の震災対応で最も良かったことは、これまでの努力が功を奏したことだ。

―ガス、電気、水道の復旧期間が比較された。
   開閉栓で全ての需要家を2回訪問するなど、安全確保のためにどうしても時間はかかる。そのことをまだ十分認識できていない人がいる。これはガス業界として反省すべき点ではないかと思う。復旧作業に関する日頃の周知、広報が足りなかったのではないか。

―南海トラフ巨大地震の発生が懸念されている。
   今回は供給停止が5%だったが、南海トラフ巨大地震ではそれがもっと大きくなる。その場合、供給停止はどうしても長期間になる。ガス業界として限られた人的資源をどのように投入するか。そうした状況は当然考えておく必要がある。

―エネルギー業界として、取り組むべき課題は。
   南海トラフ巨大地震の時にはどうなるかということをできる限り明確にイメージしてほしい。そこから課題を設定する。
巨大地震への備えは、結局のところ導管の耐震化しかない。特に高圧管や中圧管にダメージがあると、産業界への影響が甚大になる。あらためて高圧管、中圧管の安全性の再確認が必要だ。
耐震化を進めた上で、震度6弱の揺れで供給停止する妥当性も含めて考えることが必要になってくるかもしれない。
大規模地震発生時は、人員の確保が何よりも重要となる。現在は業界内の連携だが、ガス(都市ガス、LPガス)、電気、水道など、業界の垣根を越えた相互連携協力に期待したい。人的に余裕がある場合、相互に助け合うような仕組みを築くことは、日本を維持するために大切なことだ。

(ガスエネルギー新聞8月27日付)