再エネが企業競争力を高める時代へ、脱炭素化を目指す日本企業の戦略とは?

廣町公則,スマートジャパン

2018年06月15日

企業による再生可能エネルギー導入拡大の動きが、日本でも加速している。再生可能エネルギーへの積極的な取り組みは、企業の競争力を高めることに結びついているという。本稿では、RE100への加盟でも知られる積水ハウスとイオンの取り組みについて紹介する。

事業で利用する電力を100%再生可能エネルギーとする目標を掲げる企業が、日本にも増えてきた。再生可能エネルギーの積極的導入は、いまや企業にとって単なるCSR(社会的責任)ではなく、ビジネス競争力を高めることにも直結するという。自然エネルギー財団は2018年3月、企業セミナー「自然エネルギーが企業の競争力を高める」を開催した。六本木ヒルズ(東京都港区)で行われた同セミナーについて、講演企業の最新動向とともにリポートする。

脱酸素社会の実現に向けて、世界各国の企業が再生可能エネルギーへの取り組みに本腰を入れている。欧米企業に比べて遅れている感の否めない日本企業だが、積極的な取り組みを進めているところも少なくない。セミナーでは、「RE100」への加盟で注目される積水ハウスとイオンが自社の取り組みを紹介した。

積水ハウス、住宅太陽光の電力買取も視野に

積水ハウスは2017年10月、RE100に加盟した。RE100は事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーにすること(Renewable Energy 100%)を目指す、世界の主要企業が加盟する国際ネットワークだ。日本企業としてはリコーに次いで2社目、建設業界としては国内初の加盟企業となる(2018年3月末時点でRE100に参加する日本企業は、加盟順に、リコー、積水ハウス、アスクル、大和ハウス、ワタミ、イオンの6社)。

同社は以前から環境対策を重視しており、2008年には“2050年までにライフサイクルCO2をゼロにする”という「脱炭素宣言」を行っている。実際、2009年には環境配慮住宅「グリーンファースト」を発表し、低炭素と快適な生活を両立する住まいの供給を開始した。2013年からは、その進化型である「グリーンファーストゼロ」を販売し、累積棟数は3万棟に超えている。請負契約におけるZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)の比率は、現在約74%ということだ。

積水ハウスの環境戦略 出典:積水ハウス

発表を行った積水ハウス 環境推進部課長の真鍋弘毅氏は、こうした取り組みの背景にある理念について次のように話す。「事業モチベーションになっているのは社会問題を解決するということ。環境問題、エネルギー問題、少子高齢化問題などさまざまな社会問題がありますが、私たちはその中心に住宅があると考えています。良い住宅を供給することは社会問題を解決することだという認識のもと、事業を進めているのです」。

そして、販売する住宅のZEH化とともに重視しているのが、企業として排出するCO2を減らしていくことだという。具体的には、事業活動で消費する電力のすべてを再生可能エネルギーに転換する。同社ではRE100への加盟に際し、2040年までにそれを実現することを宣言した。中間目標として、2030年までに50%を再生可能エネルギーにすることを目指す。

再生可能エネルギーの調達にあたっては、自社が供給した住宅の屋根にある太陽光発電設備も取り込んでいく。「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」の買取期間が終了した太陽光発電設備で発電された電力を買い取り、事業用電力として使っていこうという計画だ。太陽光発電設備を搭載したZEHの販売が、将来の電源調達にもつながっていくという、住宅メーカーならではのスキームといえるだろう。

ZEHのイメージ 出典:積水ハウス

パネルディスカッションに登壇した同社常務執行役員 環境推進部長の石田建一氏は述べている。「多くの日本の経営者は、環境問題=CSRだと思っている。そして、CSRはコストだと考えているのではないでしょうか。しかし、これはCSRでもコストでもなく、競争力を高める事業そのものなのです」。

バリューチーン全体で脱炭素化を図るイオン

イオンは2018年3月28日、「イオン脱炭素ビジョン2050」を策定し、併せて日本の小売業として初めてRE100への加盟を発表した。「イオン脱炭素ビジョン2050」では、店舗で排出するCO2を2050年までに総量ゼロにするとともに、商品の製造・物流など事業の過程で発生するCO2についてもゼロにする努力を続けていくと宣言。中間目標として、店舗で排出するCO2を2030年までに総量で35%削減すること(2010年比)を表明した。

「イオン 脱炭素ビジョン2050」の骨子 出典:イオン

脱炭素化に向けては早くから取り組みを進めており、2008年にはCO2の排出削減目標を定めた「イオン温暖化防止宣言」を策定、2011年には「低炭素社会の実現」を含む「イオン サステナビリティ基本方針」を発表している。セミナーで登壇したイオン グループ環境・社会貢献部部長の金丸治子氏は、「サステナビリティ基本方針は、持続可能な社会の実現を目指すものです。経営においても、グループの成長と社会の発展の両立を基本に考えています」と話す。RE100への加盟も、その一環にあるというわけだ。

イオンが排出するCO2の約9割は電力であり、全国の店舗などで消費する電力は74億kWh(キロワット時)/年にのぼるという。これは日本全体の出力消費量8505億kWh/年※の0.9%に相当する量だ。2030年目標(CO2排出量35%削減)を達成するためには、店舗使用電力の削減(省エネ推進)と使用電力を再生可能エネルギーに切り替えていくこと(再エネ転換)が重要となる。

※経済産業省資源エネルギー庁「平成28年度電力調査統計表」より

具体的には、太陽光発電設備の導入、再生可能エネルギーの自社調達、外部から供給を受ける電力を再生可能エネルギーに転換する。加えて、照明・空調・冷ケースなどへの省エネ設備の導入や、IoTによる運用改善を通してCO2削減を目指す。さらに、各種スマート技術の導入やエネルギーの遠隔一括管理など、さまざまな手法を組み合わせた環境配慮型店舗「次世代スマートイオン」の開発にも取り組んでいく。

パートナー企業や顧客へもCO2削減への協力を働き掛ける。まず、商品サプライヤーに関しては、製造委託先企業へCO2削減目標の設定を要請するとともに、CO2削減貢献商品の開発を呼び掛ける。また、顧客に対しては、イベントや商品を通じて家庭での省エネを提案。あわせて買物袋持参運動や環境教育にも力を入れる。大手小売企業ならではのネットワークを生かして、バリューチェーン全体で脱炭素社会の実現を目指していく考えだ。

バリューチェーン全体で脱炭素社会の実現を目指す 出典:イオン

これまで日本の電力政策は、主に国と電力会社によって決められてきた。しかし、ここにきて大口需要家である企業の存在感が増してきている。上述の事例からも分かる通り、大手企業の取り組みは関連するパートナー企業にも影響を与え、社会全体を変えていく力をもつ。国のエネルギー政策においても、こうした動きは無視できない。

パルディスカッションに参加した環境省 地球環境局長の森下哲氏も、「重要なことは、世の中の変化に対応して政策を進めていかなければならないということだと思っています。とりわけ気候変動は大きな課題でありまして、一部の機関・組織が取り組んだだけでは、まったく歯がたちません。政府はもとより、企業、産業界、金融界、自治体、国民の皆さまで力を合わせて取り組んでいかなければなりません。その中で、“気候変動問題・環境問題に取り組むことはもうかるんだ”と感じてもらえるような、産業界の後押しになるような政策を進めていきたい」と話している。

この日、司会を務めた自然エネルギー財団 自然エネルギービジネスグループ マネージャーの石田雅也氏は言う。「脱炭素化への取り組みを、リスクと捉えるか、オポチュニティ(機会)ととらえるかが非常に重要なポイントです。海外で気候変動に取り組んでいる企業の多くは、それをリスクではなくオポチュニティと捉えています。世界的な傾向として、金融界や有力な投資家が、企業に対して再生可能エネルギーの利用を求めるというプレッシャーも高まっています。化石燃料には先が見えないからです。日本においても、技術・金融・社会・政策、いろいろな要素の変革があいまって、再生可能エネルギーが大きく進展していくものと期待しています」。

パネルディスカッションの様子 写真提供:自然エネルギー財団