再エネ主力電源になれるか
全体コストの低減不可欠

2018年05月31日

新たな系統 利用ルール

新たなエネルギー基本計画に、再生可能エネルギーを主力電源化するとの方針が盛り込まれる。再稼働する原発が当初の想定ほど増えそうにない中、低炭素社会の構築に向けて再エネの役割はますます大きくなる。だが、誰もが認める主力電源になるための課題は少なくない。導入量の一層の拡大に加え、再エネ導入に要するコスト全体の低減が欠かせない。発電量が不規則に変わる自然変動電源の電気の出力を安定化させる事業モデルの創出も必要だ。自由化政策との整合性が問われている。

中間整理を取りまとめた5月15日の再エネ 大量導入・次世代電力ネットワーク小委

4月に公表された新たなエネルギー基本計画の骨子案には、再エネについて「今後も更なる大量導入により主力電源の一翼を担うことが期待される」との文言が盛り込まれた。「主力電源」の定義は必ずしも明確ではないが、大前提として2030年度の電源構成比目標22~24%の達成が求められる。

再エネの導入量は、太陽光に偏っているとの問題はあるものの、12年7月に始まった固定価格買取制度(FIT)により着実に増えてきた。FIT開始以来、再エネの設備容量は年平均26%で伸びている。稼働中の発電容量は17年3月末時点で、5500万kw超に達した。16年度の電源構成比率は大型水力を含めて約15%まで上がっている。

(資源エネルギー庁資料)

とはいえ、目標達成への道のりはまだ遠い。実際、設備容量の増加に伴い、導入量拡大の新たな阻害要因も顕在化していた。いわゆる系統制約の問題だ。送電事業者は従来、想定される最大限の潮流が系統の運用容量を超える場合には電源の新規接続を認めていなかった。系統を増強すれば接続できるが、電源設置者がその費用を負担する必要がある。その結果、事業の採算性が確保できないとして、電源新設を断念するケースが出ていた。

資源エネルギー庁は昨年12月、この問題を中心に再エネの主力電源化に向けた課題を包括的に議論する場として、「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」を新設。同小委での検討の結果、「日本版コネクト&マネージ」を柱とする新たな系統利用ルールの創設を決めた。本格的な制度運用はこれからだが、導入量拡大には強い追い風になりそうだ。

事業者間の競争を促す

だが、電源構成比率の目標が達成されれば、それで主力電源と位置付けられるわけではない。基本的にFITに依存する再エネは、自由化された市場とは原理的に相いれない存在だ。誰もが認める主力電源になるためには、コストの徹底的な削減により十分な価格競争力を獲得し、市場原理の中で需要家から選択される必要がある。

ただ、全ての再エネ電源が近い将来、経済的に自立することは現実的でない。再エネ大量導入小委では、FIT対象の五つの電源種のうち主に太陽光と風力を「急速なコストダウンが見込まれる電源」と位置付けた。大規模電源における入札制の拡大や中長期価格目標の設定などにより発電事業者間の競争を促し、コスト低減につなげる狙いだ。その方向性をさらに徹底するため、20年度に予定されるFIT法の抜本的見直しでは、市場原理をより加味した仕組みが導入される可能性が高い。

ここで問題が単純でないのは、発電コストだけが再エネ導入に要するコストではないことだ。再エネ大量導入小委の中間取りまとめは「発電コストとネットワークコストのトータルでの最小化を実現するシステムへの移行が重要」だと強調している。ネットワークコストとは具体的に、系統の維持・運用費用や系統全体の周波数維持のための調整力コストのことだ。

省エネの進展などにより系統全体の需要が頭打ちになり託送料金収入が増えないにもかかわらず、再エネなど分散型電源の導入拡大に対応する「次世代電力ネットワーク」構築のための投資が今後必要になる。投資費用をできるだけ抑制する観点から、再エネ電源を系統接続コストが比較的小さい地点に誘導する仕組みが新たに導入される。電力・ガス取引監視等委員会が主導して、小売事業者に100%課されている託送料金の一部を発電事業者にも負担させることを決めた。FIT電源も含めて系統に接続した全ての電源が原則的に課金対象となる。

再エネ優遇の批判誘発も

だが、ネットワークコストを追加的に負担させることで再エネ発電事業の採算性が悪化し、導入量拡大にブレーキをかける要因になっては本末転倒といえる。課金額は設備の発電容量に応じて決まるため、設備利用率の低い再エネ電源の負担は相対的に重くなるという問題も指摘されている。

そのため、エネ庁は発電側課金導入の影響を緩和する施策を併せて導入する。電源の系統接続時の費用に占める一般負担金(託送料金原価に算入)の上限を見直すことはすでに決めた。これまでは電源種ごとにばらつきがあったが、1kW当たり一律4万1000円になる。太陽光や風力、小水力などの再エネ電源は負担軽減になる。

託送料金負担分をFITの買い取り費用に反映させる措置も今後検討する。FIT電源は売電価格が決まっており、託送料金課金による負担増分を小売事業者に転嫁できないという問題があるためだ。調達価格等算定委員会が何らかの調整措置を検討する方針だ。

(資源エネルギー庁資料)

だが、こうした施策は一歩間違えると、過度の再エネ優遇との批判を誘発する可能性がある。実際、発電側課金の導入が「20年以降できるだけ早い時期」として具体的に決まっていないのに対し、一般負担金の上限見直しは電力広域的運営推進機関での審議等を経て速やかに実施する方針だ。発電側課金の導入が遅れれば、再エネ電源は本来負うべきネットワークコストの負担をなし崩し的に免れかねない。

調達価格等算定委で今後検討される調整措置に対しても、「調達価格が確定済みの電源も調整対象にするなら、調達価格自体もゼロベースで見直すべきだ」(経団連)などとけん制する動きが早くも出ている。エネ庁は難しいさじ加減を迫られそうだ。

安定販売の事業モデル

自然変動電源を安定的に販売する事業モデルの構築も主力電源化に向けた大きな課題だ。FIT電源のインバランスリスクは現在、送電事業者が一手に引き受ける特例措置が設けられているが、買取期間終了後は発電・小売事業者がリスクを自ら負うことになるからだ。また、買取期間中の電源についても、同リスクの一部を発電・小売事業者に負わせる方向での検討が行われている。

エネ庁は19年度から買取期間が終了し始める住宅用太陽光については自家消費を中心とした事業モデル、大規模な太陽光や風力については売電を中心とした事業モデルをそれぞれ検討する方針だ。複数の機器を組み合わせて運用する仮想発電所(VPP)など、蓄エネルギー技術やデジタル技術を活用した新たな仕組みを構築する。蓄電池の価格低減などが課題になる。

一方、再エネ電源の競争力向上につながる要素としては、再エネに付随する非化石価値の証書化がある。ただ、このほど初めて行われた取引では、供出量の0.01%程度しか買い手がつかなかった。非化石価値証書は一義的には、小売事業者がエネルギー供給構造高度化法により課せられた非化石電源比率を達成するための措置だ。再エネ電源の価値向上のためのツールとして活用するには、改善の余地がありそうだ。

こうした点も含めて、再エネ発電事業の将来性には不透明な要素が多いが、低炭素社会への移行のために再エネの大量導入はもはや至上命題といえる。電力システム改革全体と整合が取れるかたちで再エネの主力電源化をいかに実現するか。エネ庁の手腕が問われている。

(ガスエネルギー新聞5月28日付)