2030年自然エネルギー30%へ、自治体の協議会が提言

廣町公則,スマートジャパン

2017年10月13日

自然エネルギーの導入加速化を求める声が、地方自治体から上がっている。全国34道府県を正会員とする「自然エネルギー協議会」と、19政令指定都市を正会員とする「指定都市自然エネルギー協議会」が、それぞれに提言書を取りまとめた。

カーボンプライシングで地域経済を活性化

自然エネルギー協議会(会長:徳島県知事 飯泉嘉門氏)は2017年8月30日、経済産業省に政策提言書を提出した。岩手県盛岡市で先頃開催された同協議会第13回総会で採択されたものだ。脱炭素社会へ向けた世界的な動きを念頭に、「意欲的な自然エネルギーの導入目標の設定」や「電力システム改革の着実な推進と系統問題の解決」など、導入拡大への前向きな取り組みを促す内容となっている。

徳島県知事・飯泉嘉門氏(左)が、経済産業大臣政務官・大串正樹氏に提言書を手渡し、その内容を説明

具体策の1つとして、「カーボンプライシング(炭素の価格付け)」を軸とした二酸化炭素排出量取引制度の整備を提唱。カーボンプライシングの収入を活用することで、国民負担を抑制しつつ、自然エネルギーの導入加速化が可能であることをアピールする。これを通して、新たなイノベーションを創出し、地域経済の活性化につなげていきたい考えだ。

地産地消型エネルギーで強じんなまちづくりを

京都市長・門川大作氏(左)が、環境大臣・山本公一氏(7月当時)に提言書を手渡した

これに先立ち、指定都市自然エネルギー協議会(会長:京都市長 門川大作氏)は2017年7月11日、都内で開いた第9回総会において提言書を取りまとめ、経済産業省および環境省に提出した。道府県の協議会同様に、自然エネルギーの導入拡大を強く求めるものであり、「持続可能な社会の構築、強靭(じん)なまちづくり」の観点からも自然エネルギーは不可欠であるとの認識を示している。

提言内容としては、「地産地消型の分散型エネルギーの普及拡大」を重視しているところに特徴がある。平時はもちろん、災害時のエネルギーセキュリティといった防災の観点も踏まえ、電力系統に接続した分散型エネルギーだけでなく、電力系統に接続していない状態(オフグリッド)での地産地消型エネルギーについても考察。具体的には、大型蓄電池・エネルギーマネジメントシステムなどを駆使した効率的なエネルギー利用や、排熱・太陽熱・地中熱などを生かした熱利用システムなどについて、関係省庁の横断的かつ積極的な導入支援を求めている。

指定都市自然エネルギー協議会、第13回総会の様子

自然エネルギー導入加速化へ、エネルギー基本計画見直しに期待

道府県、政令指定都市、いずれの協議会の政策提言にも、2030年に日本が目指すべき自然エネルギーの割合が示されている。その数値は、どちらの提言においても30%。これは、「エネルギー基本計画」に基づいて、2015年7月に策定された国の「長期エネルギー需給見通し(エネルギーミックス)」の数値22~24%を上回るものだ。

欧米など自然エネルギー先進地域においては、40%を超える目標を設定しているところも少なくない。日本においても、提言にある通り、系統運用の見直しをはじめとした導入促進策により、自然エネルギーの割合を高めることは十分に可能だろう。国の「エネルギー基本計画」は、今年度中にも見直しの検討が予定されている。今回、発表された自治体の政策提言に耳を傾け、自然エネルギーのさらなる導入拡大を明記してほしいものである。

 

以下では、自然エネルギー協議会が提出した政策提言「自然エネルギーによる『脱炭素社会』の実現に向けて~自然エネルギーの最大限導入による地域活性化の推進~」から、主な項目の抜粋して紹介する(編集注:一部の漢字表記などの表現を修正しています)。

・1. 意欲的な自然エネルギーの導入目標の設定

自然エネルギーの導入拡大に向けて、課題とされている高いコストや電力系統への負荷の増大に対し、技術開発による低コスト化や高効率化、気象データを用いた発電予測技術の向上、さらにはディマンドレスポンスの拡大、系統運用の広域化、自家消費の推進や蓄電技術の向上など、課題に対応しながら、多様な自然エネルギーの導入を目指して目標をさらに引き上げることは十分可能である。

加えて、「パリ協定」の「気温上昇を産業革命前に比べ2度未満に抑える」という目標を達成するには、今後の人為起源の累積二酸化炭素排出量を約1兆トンに抑える必要があるとした「カーボンバジェット」の考え方に基づき、世界的にも温室効果ガス削減手法の有効性が認識される「カーボンプライシング(炭素の価格付け)」を実効性あるものとする必要がある。

このため、二酸化炭素の総量削減につながるような排出量取引制度の整備をはじめとしたカーボンプライシングにおいて、環境、経済の両面において持続可能な成長に寄与するよう、社会・経済活動を阻害しない緻密な制度整備に向けた検討を積極的に行うとともに、カーボンプライシングの収入を自然エネルギー普及に活用するといった施策を講じることで、国民負担の最小化に配慮しつつ、自然エネルギーの普及拡大を推進することにより、GDP600兆円の実現の「成長戦略」(日本再興戦略2016年)においても重要な役割を果たすなど、イノベーションの創出、経済活性化に向けた施策展開をさらに進めるよう要望する。

脱炭素社会の実現に向けた自然エネルギーの導入を加速するべく、総発電電力量における自然エネルギーの割合を「2030年には30%を超える」などの意欲的な導入目標へと引き上げ、省エネをはじめとする需要サイドの取組や、具体的なロードマップ策定等の着実な推進を図りながら、日本全体で自然エネルギーの導入を加速するとともに、今年度に見直しの検討の着手が予定されているエネルギー基本計画において、自然エネルギー導入の現状を踏まえた改定の実施、および導入目標の引き上げの明記を要望する。

・2. 地産地消型の自然エネルギーの推進による地方創生

過疎化をはじめ、地方が直面する大きな課題を乗り越え、元気で豊かな地方の創生を進めていくためには、地域に豊富に存在する自然エネルギーを地域の特性に応じて最大限活用し、「エネルギーの地産地消」による地域の活性化を戦略的に進める必要がある。

近年、全国各地で、地震、台風、集中豪雨などによる大規模な自然災害に相次いで見舞われており、地域防災力強化のためにも非常時の電力確保・供給体制を整備しておくことの必要性が再認識されている。今後起こりうる自然災害に対するエネルギー・システムの強靱化を図り、持続可能な地域社会を構築するためにも、自然エネルギーの更なる普及拡大が不可欠である。

また、電気だけでなく、熱利用や移動用燃料としての利用など、適正規模と地域特性を踏まえた自然エネルギーの導入を総合的に推進していくべきであり、例えば、地域のバイオマス資源を活用したボイラーやコージェネレーションは、地域外より購入する化石燃料を直接代替できるため、地域内での経済循環を生み出す可能性を持っている。

このため、国においては、自然エネルギーの普及が地域に及ぼす経済効果等を明らかにし、地球温暖化対策税を地域の自然エネルギー施策に最大限活用するほか、導入に対する助成や税制特例措置の拡充を行い地域の事業者や自治体による自立普及を後押しし、自然エネルギーの導入促進に必要な技術開発や地域産業と連携した先導的技術の導入、地域経済の活性化につながる地産地消型モデルの推進施策について、省庁横断的に取り組むよう要望するとともに、頻発する自然災害への備えとなる自立分散型のエネルギー・システムを実現し、地域防災力の強化を加速させる必要がある。

加えて、自然エネルギー由来の「水素」の活用は、地球温暖化対策はもとより、電力を水素に変換して貯蔵することにより、自然エネルギーによる電力の変動を吸収し、電力供給の安定化や系統の負担軽減に活用できることなど、自然エネルギー導入量の最大化に大きく寄与すると期待される。自然エネルギーの導入と水素の利活用が相互補完的に進むような実証研究の実施、インフラの整備および規制緩和を迅速に進めていくことを要望する。

・3. 固定価格買取制度の適切な見直し

固定価格買取制度の適切な改善を図りながら、着実な導入拡大および市場創出によるコスト低減化を最大限図っていくべきである。新たに導入された入札制度においても、今後、入札結果の検証を行う中で、地域の事業者への影響についても考慮し、入札の対象範囲が拡大しないようにするとともに、本年4月の改正で引き下げられた陸上風力の調達価格についても、新たに設定されたリプレース区分も含め適正な価格となっているかあわせて検証を行い、地域の実情をふまえた自然エネルギーの健全な普及拡大が進められる制度とするよう、引き続き要望する。

また、FIT法の改正により、事業計画を認定する仕組み、法令違反時の処分など一定の措置がなされたが、法令順守状況のチェックの徹底、住民説明の順守化、事業終了時の設備撤去の担保、より細分化した規模別の価格設定の導入、自治体向け情報提供システムの充実による早期の情報提供などについて、地方創生に資するとともに地域と調和した自然エネルギーの導入が促進されるよう、引き続き対策を講じるよう要望する。

平成21年11月に開始した住宅用太陽光発電の余剰買い取り制度において、平成31年以降、何十万もの案件が10年の買い取り期間を終える、いわゆる「2019年問題」が懸念されることから、国が主体となり、電力会社等との連携の下、地域の新たなエネルギーとして活用できるよう、余剰電力が引き続き電力系統で有効活用できる環境整備や自家消費の実現などの、適切な対応を講じるとともに、加速度的に増加することが想定される使用済み太陽光パネルについて、適正処理を行うための体制構築を要望する。

・4.電力システム改革の着実な推進と系統問題の解決

消費者が自然エネルギーによる電力を積極的に選択できるよう、分かりやすい電源表示や、幅広い層に対する情報開示の義務化など、消費者の目線に立った制度整備がなされるよう要望する。

同時に、地域の自然エネルギーで生み出した電気を地域内で最大限活用するためには、自然エネルギー電気の生産者と需要家をつなぐ送配電網の利用コストを低く抑える必要があることから、託送制度について、エネルギーの地産地消を促す戦略的な制度設計がなされるよう要望する。

なお、託送料金をめぐる議論に際しては、自然エネルギーを提供する地域新電力の発展を阻害することの無いよう、慎重な検討を要望する。

指定電気事業者制度の適正な運用を確保するため、電力会社が算定した接続可能量について、その増大を図るため、まずは、第三者機関による妥当性の検証を早急に行い、その結果を踏まえた適切な対応を行うとともに、一度行った指定電気事業者認定を解除する規定がないため、認定を解除する規定を設けるよう要望する。

また、系統運用の改善や系統の弱い地域における連系線の計画的増強、それらを通じた指定解除の見通しの明示など、国が責任をもって、系統問題解決に関わるあらゆる策を講じるよう要望する。

今年度中に導入が予定されている「非化石価値取引市場」においては、自然エネルギーの価値を明確化し、消費者が環境に配慮した電力である自然エネルギーを積極的に選択できる仕組みを整備するとともに、エシカル消費を促すなど、消費者にわかりやすく、実効性のある制度とするよう要望する。

・5.規制改革の推進

自然エネルギーの導入の支障となっている規制・制度等も未だ残されている現状に鑑み、今後も、規制改革会議において活発な議論を行うとともに、その結論を踏まえた規制改革の取組を速やかに実行に移すべきである。

環境影響評価については、事例の蓄積等を踏まえ、更なる簡素化・迅速化を要望する。

土地利用については、例えば、自然エネルギーの適地であるものの、転用が困難な第1種農地についても、一定条件を満たせば転用を可能とする法律(農山漁村再エネ法)が平成26年5月に施行されたものの、各市町村における基本計画の策定が必須であり、その負担の大きさから、策定済の自治体が非常に少ないのが現状である。

農地の保全・有効利用や林地の適切な利用との調和を図りながら、自然エネルギーの最大限の導入を図るため、土地利用制度の適切な見直しや手続の円滑化に向けた省庁横断的な検討を行うとともに、優良事例の収集および公表を積極的に行うよう要望する。

中小水力については、出力が安定した電源であり、地域での活用が望まれていることを考慮し、事業者の参入を促すことを目的として、公表されている全国の流量データ等の充実を図るとともに、導入に際し課題となっている要因を具体的に検証し、導入を積極的に推進するよう要望する。

また、一般海域における洋上風力発電の導入促進を図るべく、国が主導的役割を果たしながら、開発区域の設定、海域利用ルールや環境影響評価手法等の必要な条件を早期に整備するよう要望する。

続いて、指定都市 自然エネルギー協議会の政策提言「自然エネルギーによる持続可能な社会の構築に向けた提言~自然エネルギーによる強靭なまちづくり~ 」の抜粋を紹介する(編集注:一部の漢字表記などの表現を修正しています)。

提言1.自然エネルギーの最大限の導入に向けた目標値の設定

2015年7月に、エネルギー基本計画を踏まえ策定された「長期エネルギー需給見通し」では、2030年の自然エネルギーの割合を22%から24%程度と示している。しかし、2016年12月時点の再生可能エネルギーの設備導入量は、FIT制度開始後に認定された容量の約38%でしかなく、増加のポテンシャルはまだまだ大きい。そのため、今年度見直しに着手するエネルギー基本計画については、2030年の電源構成において、自然エネルギーの割合を30%程度とする積極的な目標値を示すこと。

提言2.自然エネルギーの最大限の導入に向けた対策

 ・1.地産地消型の分散型エネルギーの普及拡大

平時の低炭素化だけではなく、災害時のエネルギーセキュリティの確保といった防災の観点も踏まえ、系統に接続した分散型エネルギーに加え、系統に接続していない状態(オフグリッド)での地産地消型自然エネルギーの導入についても関係省庁が横断的かつ、積極的に支援を行うこと。

エネルギーの効率的な利用に向けた支援:大型蓄電池、エネルギーマネジメントシステム、バーチャルパワープラント、ゼロエネルギーハウス・ゼロエネルギービルなど。

未利用熱やコージェネレーションシステムの普及拡大に向けた支援:排熱、太陽熱、地中熱、下水熱の有効利用、熱導管を含めた熱利用システムの実証・導入など。

 ・2.FIT制度の適切な運用

今年度より大規模太陽光発電施設の入札が開始されるが、これが国民負担の軽減につながっているか等の成果を検証するとともに、制度の運用において地域の自然エネルギーの普及を妨げないように実施すること。

太陽光発電の長期安定電源化実現のため、必要な措置を早急に講じること。あわせて、太陽光パネルの耐用年数経過に備え、リサイクル技術の確立、再利用を円滑に実施できる制度、安全な廃棄や処分のルールを策定するとともに、地域ごとのサポート体制の構築を図ること。

 ・3.エネルギーシステム改革の着実な推進

自然エネルギーが最大限導入されるよう、地域間連系線の「間接オークション方式」の制度設計を行うとともに、既存の電力系統のさらなる活用を促進すること。あわせて、「広域系統長期方針」において北海道、九州エリアなど、自然エネルギー導入適地からの送電網への接続可能量を最大化することを位置づけるよう、引き続き国が指導すること。

従来の託送料金制度では電力系統の双方向化等が考慮されておらず、分散型エネルギーの導入に託送料金のコストが大きな障壁となっている。IoT 技術の活用など、分散型エネルギーの普及を後押しするとともに、託送料金制度の抜本的な見直しを進めること。

需要家に低廉で安定的な電力を提供するため、卸電力市場の自然エネルギーの取引量を増やし、市場の活性化を図ること。また、国が導入を検討している非化石価値取引市場においては、自然エネルギーの導入拡大を前提とするとともに、消費者が自由に選択できる制度とすること。さらに、発送電分離については、その実効性を確実なものとするため、一般電気事業者の小売部門と新電力との公正な競争を実現すること。

水素社会の実現に向け、国民が水素に対する理解を深める機会を提供し、水素エネルギーの円滑な導入に向けた環境づくりを進めていく必要がある。また、太陽光やバイオマスなど自然エネルギー由来の電力を活用した水素は、我が国のエネルギー需給構造を変える可能性があることから、「ためる」、「はこぶ」、「つかう」といった仕組みを展開していく必要がある。

そのため、国においては、省庁横断的に水素ステーションなどのインフラ整備や、住宅用・産業用燃料電池の利活用、FCVやFCバス等の導入を着実に推進し、設備導入に対する財政支援を行うこと。また、平時のみならず、災害時にもエネルギーの供給体制が適切に機能する分散型電源としての観点からも、自動車からの外部給電などの仕組みの構築を支援すること。