自由化で先行する欧州、その後追う国内企業の動向

庄司智昭,スマートジャパン

2017年07月28日

資源エネルギー庁は、エネルギー政策の動向に関する年次報告書「2016年度エネルギー白書」を閣議決定した。その第1部 3章から自由化で先行した欧州の事例と国内の動向を紹介する。

自由化で先行する欧州

電力に続くガスの小売全面自由化が2017年4月に始まり、競争が活性化するエネルギー産業。安定供給を担う主体として、事業地域の拡大や異分野への進出、新サービス創出といった総合的な対応が求められている。資源エネルギー庁は2017年6月、エネルギー政策の動向に関する年次報告書「2016年度エネルギー白書」を閣議決定した。

その第1部 第3章には「国内外のエネルギー制度改革とエネルギー産業の動向」として、国内エネルギー産業の競争力強化の参考に欧米の事例が紹介されている。

まずエネルギー需要の推移をみると、日本のエネルギー消費量は2005年から減少傾向にある。欧米は頭打ちだ。一方でアジアを中心とした新興国は需要が増加しており、このような需要増が見込まれる国外市場への展開が成長のカギの1つになると指摘する。

エネルギー需要の推移 (クリックで拡大) 出典:資源エネルギー庁

自由化で先行する欧州では国内外の自由化を背景に、国内市場における競争激化とリスクが高まっているが、海外市場でシェアを拡大する機会が増加しているという。例えばドイツE.ON(エーオン)は、PowerGen(パワージェン)の買収によってイギリス市場に参入したことを皮切りに、15カ国に本格参入して規模を拡大している。

その他、スウェーデンVattenfall(バッテンフォール)やフランスEngie(エンジー)、イタリアENEL(エネル)は国外売上高比率が60%を超えている。国内はJ-POWERが約20%だが、東京電力や東京ガス、大阪ガスなどは10%以下である。

ベンチャーへの出資やM&Aも活発化

異分野への進出も活発だ。先述したE.ONは非戦略の化学事業などを売却し、世界最大級のガス事業者Ruhrgas(ルールガス)を2013年に買収した。ノルウェーやロシアなどにもガス事業を展開し、2015年には売上高の約50%をガス事業が占めた。

またスペインIberdrola(イベルドローラ)は再生可能エネルギー投資を拡大し、電源構成を組み替えて成長している。2007年にイギリスScottish Powerを買収。2009年には322MWの陸上風力発電施設を開所したのに加えて、フランスAreva(アレバ)とバルト海における350MWの洋上風力事業を2014年に締結した。これにより、2005年は電源構成のうち再エネが占める割合は12%だったが、2015年には32%まで拡大した。

ベンチャー投資やM&Aの動向 (クリックで拡大) 出典:資源エネルギー庁

エネルギー白書では、新たな収益源を模索する企業の増加も指摘している。再エネや蓄電池、分散型電源の制御、ビッグデータ解析といった多様な技術を用いて実現されるため、全てを内製化するには限界がある。そこで欧米企業は、ベンチャーキャピタルへの投資やM&Aを通して、新たな技術の獲得を積極的に模索しているという。

 

日本をとりまく環境の変化

国内企業においても、海外展開および異分野への進出は増え始めているという。東京ガスと大阪ガスは海外事業に注力する計画を掲げており、東京ガスは利益ベースで2020年に海外比率25%、大阪ガスは2030年に同3分の1まで拡大する方針だ。

東京ガスは上流分野で資源事業の拡大、LNGバリューチェーン構築を目指す。中下流分野はエネルギーサービス、エンジニアリング事業の海外展開を検討。大阪ガスは北米とアジア、オセアニアを中心に上流から中下流までの事業拡大を目指す。

国内で積極的な海外展開を志向する企業 (クリックで拡大) 出典:資源エネルギー庁

異分野への進出としては、大阪ガスと関西電力の事例を挙げた。大阪ガスは子会社の大阪ガスケミカルを通じて、水や空気の浄化などに利用する活性炭事業で大手のJacobi Carbons ABを約383億円で買収するなど、近接事業への進出を行っている。

関西電力は、2015年10月に日射量短時間予測システム「アポロン」を発表した。気象庁の衛星画像を利用して1km四方の雲の種類と状況を分析し、最大3.5時間先まで3分刻みに推定・予測できるシステムだ。60分先予測の総合誤差は、9%以下を実現。中央給電司令所に導入することで、需給制御に関わるコスト削減につながったとする。

動き始めたJERAの挑戦

国内における動向には、東京電力と中部電力が2015年4月に折半出資で設立したJERAも「動き始めたJERAの挑戦」として紹介されている。JERAでは火力発電事業の機能別再編を目指し、2019年度上期には既存火力事業の統合を図る予定。統合が完了した場合、「LNG調達規模」と「火力発電規模」において世界最大級となる想定だ。

JERAが掲げる目標 (クリックで拡大) 出典:資源エネルギー庁

なおエネルギー白書では、今回紹介した他に福島復興の進捗やエネルギー政策の新たな展開などがまとめられている。資源エネルギー庁のWebサイトから閲覧可能だ。