SOFC発電効率の高みへ、火力発電超える65%実証

庄司智昭,スマートジャパン

2017年06月19日

東京ガスは、固体酸化物形燃料電池(SOFC)の発電効率を向上させる技術を開発したと発表した。5kW出力規模のホットボックスで、AC発電効率で65%LHV相当になることを実証したという。

さらなる高効率化を進める3つの技術

ホットボックスの外観写真 出典:東京ガス

世界で初めて5kW(キロワット)級の出力規模で、AC発電効率65%相当を確認した――。東京ガスは2017年5月、固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)の発電効率を向上させる技術を開発したと発表した。5kW出力規模のホットボックス*)において、DC端発電効率73%LHVを実証したという。AC発電効率で65%LHVに相当する。

*)ホットボックス:SOFCスタックや気化器、改質器などの高温で動作する主要部品を断熱材で覆った構成の呼称。

SOFCは、電解質としてイオン電導性セラミックスを用いる固体型の燃料電池である。燃料電池の中でも特に効率の高い方式として知られており、燃料は水素の他に天然ガスなども利用できる。また動作温度が700~1000℃と高く、高価な貴金属触媒が不要なのが特長だ。

家庭や業務用に実用化されているSOFCシステムは、45~60%LHV程度の発電効率を実現している。分散型電源としては最高効率だが、さらなる高効率が求められている。そこで東京ガスは、投入した燃料をより多くの発電に利用する2つの技術と、少ない未利用燃料で熱自立する技術を組み合わせることで、さらなる高効率化に挑んだ。

1つ目は「SOFCの二段化」である。一般的なSOFCは劣化を防ぐために、投入した燃料の20%程度の発電に利用していないという。SOFCスタックを二段化して、一段目で発電した後ガスを二段目の発電に再利用することで、全体として発電に利用する燃料を多くすることができる。各段では30%の燃料を残すことで、劣化のリスクも低減した。

しかし一段目で発電した後のガスは、未利用の燃料ガスよりも発電で生成したH2OとCO2の濃度が高くなっている。そのままでは再利用できる量が限られるため、発電後のガスからH2OやCO2を除去して、H2とCOの濃度を高めるために2つ目の技術「燃料再生」を行う。一段目と同程度の濃度の燃料ガスを、二段目でも発電に利用可能となる。

今回発表した技術のイメージ (クリックで拡大) 出典:東京ガス

3つ目は少ない未利用燃料で、熱自立する技術だ。SOFCの発電はホットボックスを外部から加熱することなく、発電に伴うSOFCスタックの発熱と未利用の燃料ガスの燃焼熱により、必要な高温を維持する熱自立が必要である。投入した燃料をより多くの発電に利用すると、未利用燃料が少なくなり、熱自立に利用できる燃焼熱は減少する。

東京ガスは「高温ガスを有効に利用する技術の開発や、ホットボックスを小型化して放熱を減らすことで、SOFCの高効率発電時でも熱自立できるようにした」と語る。

今後は、プロトタイプ開発に向けた研究を進めていく。なお同技術の詳細は、2017年5月25~26日に開催される「燃料電池シンポジウム」で発表するとした。

実用化に向けて実証が進む業務用SOFC

SOFCに関する動向としては、業務用SOFCの動きが活発だ。経済産業省の「水素・燃料電池ロードマップ」では、2017年に業務用燃料電池の市場導入が目標とされている。このような背景から、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を中心にSOFCシステムの実証実験が行われ、導入効果の検証と課題抽出を行う事業が進んでいる。

2017年4月26日には、トヨタ自動車が円筒形のSOFCとマイクロガスタービン(MGT)を組み合わせたハイブリッド発電システムの実証を開始したと発表。同社の元町工場(愛知県豊田市)に設置し、エネルギー効率や運転性、耐久性の評価を行っている。

ハイブリッド発電システムは天然ガスを改質して取り出した水素と一酸化炭素を使い、SOFCとMGTそれぞれで発電する2段階の発電機構を採用した。定格出力は250kWである。発電で生じる排熱をエネルギーとして活用する熱電供給も採用している。2段階の発電によって発電効率は55%を達成。熱電供給も採用したことで総合効率は65%という。

ハイブリッド発電システムの外観 (クリックで拡大) 出典:NEDO

2017年4月6日には、日本特殊陶業が同じくSOFCとMGTを組み合わせたハイブリッド発電システムを、同社の小牧工場(愛知県小牧市)に設置したことを発表している。トヨタ自動車と同じく定格出力は250kW、発電効率55%のシステムを採用。同システムで発電した電気や発生した蒸気は、小牧工場内の生産設備や空調に使用予定とする。

他にもデンソーが飲食店や福祉施設などをユーザーに想定した、5kW級の業務用SOFCシステムの検証を進めるなど、2017年度の市場導入に向けた動きが活発となっている。