【省エネ大賞受賞】45%のCO2削減を目指すまちづくりの舞台裏
田町スマエネパークの実力

2017年04月14日
省エネ大賞とは
一般財団法人省エネルギーセンターが主催し、省エネ意識の拡大や省エネ製品の普及などによる省エネ型社会の構築への寄与を目的として、優れた省エネ取り組みや製品・ビジネスモデルなどを表彰するものです。需要・供給側が一体となって、高効率なエネルギー利用と都市機能の高度化の両立を図った街区作りに取り組み、継続的な省エネ活動を行ったことなどが評価され、本取り組みが平成28年度省エネ大賞(省エネ事例部門)「経済産業大臣賞(共同実施分野)」を受賞しました。

田町駅前で進む低炭素なまちづくり

田町スマエネパークの先行開発区域「くらしの拠点ゾーン」。左の建物がみなとパーク芝浦

JR田町駅東口の北側でここ数年、建設工事が進んでいる。田町駅を利用したことがある人の多くはきっとご存知に違いない。しかし、一見よくある駅前の再開発のようなそのエリアが、あるコンセプトのもとにつくられているまちだと知る人は、少ないのではないだろうか。

そのエリア開発こそ、まち全体で省エネ、節電、CO2削減などに取り組むことで「低炭素で災害に強いまちづくり」を目指す「田町スマエネパーク」である。港区や東京ガスなどが共同で進める一大プロジェクトだ。

すでに、エリアの半分の街区「くらしの拠点ゾーン」は完成し、①総合支所やスポーツセンターからなる港区の複合施設「みなとパーク芝浦」、②港区立しばうら保育園等、③周産期母子医療センターからなる民間の愛育病院の3施設がそれぞれ開業している。残り半分の駅に近い街区の開発が、現在も進められているというわけだ。

低炭素などを掲げるこのまちに、いったいどんな秘密があるのだろうか。

難しいコージェネレーションの仕組みやプラントの設備を説明してくれた山本さん。第一スマートエネルギーセンターのエネルギー供給開始からプロジェクトに携わってきた

「みなとパーク芝浦」などがある街区のいわば心臓部、東京ガスエンジニアリングソリューションズの第一スマートエネルギーセンターを訪ねると、地下への長い階段を降りて、数々の装置が並んだプラントに案内された。

「ここでエネルギーをつくり、3つの施設に供給しています。つまり、エネルギーの地産地消です。ここは地下1階ですが、天井を高くし、配管類をすべて上部に配置することで、コンパクトなプラントを実現しているんですよ。長い階段を降りていただいたのは、そのためなんです」

そういって出迎えてくれたのは、東京ガスの都市エネルギー事業部地域エネルギー部課長、山本智美さんだ。ここは視察や見学で訪れる人も多いため、常に稼働中のプラントながら解説用のパネルなども展示されている。山本さんは、慣れた口調でプラント設備などについて説明してくれた。

「東京ガスグループでは、このまちづくりのコンセプトを実現するため、ガスコージェネレーションシステムを核としたスマートエネルギーネットワークを構築し、街区全体の共通目標である45%のCO2削減(1990年比)に向けて、エネルギーを供給しています」(山本さん、以下同)

多種多様な熱源と自動管理システムを駆使

エネルギーの地産地消で低炭素や省エネを実現する、スマートエネルギーネットワークとはどんなものなのか。

まずエネルギーをつくるうえで中心となるのが、ガスコージェネレーションシステム(CGS)だ。クリーンな都市ガスを燃料としたエンジンで電気をつくるとともに、発電の際に出る廃熱を有効活用することができる。収納庫の扉を開け、音を立てて稼働中のガスエンジンを見せてもらうと、庫内の暖かな空気を感じる。

このことでもわかるように、高温の廃ガス等からの廃熱を蒸気や温水というかたちに変えて取り出し、冷暖房や給湯の熱源として使用するのだという。

ガスコージェネレーションシステムの仕組み。冷水、温水、蒸気の6管方式にて、非常時もエネルギーを継続供給する

これに加えて、このプラントで特徴的なのは、再生可能エネルギーや未利用エネルギーを積極的に活用していることだ。具体的には、太陽熱集熱器により温められた高温水や年間を通じて温度がほぼ一定な地下トンネル水を使って、それぞれ専用設備で冷暖房などの熱源をつくり出している。この2つの取り組みは、地域熱供給の現場では、ここが初めてのケースだという。このほかにも、燃料電池による発電など、多種多様な方法で電気や熱がつくり出されているのだ。

現在、つくられた電気はすべてみなとパーク芝浦に、熱は3施設に供給され、万一、停電が起きた場合でもみなとパーク芝浦には電気を、愛育病院には熱を一定期間の継続供給ができる体制が整備されている。

エネルギーの需給バランスを自動制御する

しかし、このようにエネルギー供給で工夫するだけでは、45%のCO2削減を目指すには不十分だ。エネルギーが効率よく使用されなければ、さらなる省エネにはつながらない。

そこで東京ガスグループでは、ICT(情報通信技術)を活用し、まち全体のエネルギーを最適にマネジメントするシステム「SENEMS(スマートエネルギーネットワーク・エネルギーマネジメントシステム)」を開発。街区の熱・電気・情報をネットワークで連携してエネルギーの見える化を実現し、施設側の需要データとプラント側の供給データを瞬時に分析、エネルギー需給を自動制御でコントロールしている。これもスマートエネルギーネットワークの大きな特徴といえるだろう。

ガス吸収冷温水機などの冷凍機の他、ボイラー、コージェネレーション設備で構成されるプラント

「個々の施設の効率化だけではなく、真の意味でのエネルギーの最適化を図るためには、街区全体を面として最適化することが求められています。この部屋が司令室となるコントロールセンターなんですが、ここにSENEMSを導入して、最適な需給バランスを自動制御しています」

ガラス窓の向こうの部屋の壁には、大きなモニターの数々が並んでいる。通常プラントのコントロールセンターといえば、多くのスタッフがモニターに釘付けになっているイメージだが、そこには数人の社員しかおらず、それぞれのデスクで作業をしている。

「たとえばプラントにおいては、気象条件などさまざまな状況のなかで、都市ガスや太陽光など複数あるエネルギー源のうち、何を優先して、どれだけ動かすのが最適なのか、常にそのバランスをコントロールしてエネルギーをつくり出しています。一方需要側に対しても、室温が高くなりすぎればこちらから空調の設定温度を下げるということを、自動制御で行っているのです」

エネルギーも人もつながるスマエネパークへ

このような自動制御でエネルギー需給の管理ができるのは、「スマートエネルギー部会という仕組みがあるから」だと山本さんはいう。スマートエネルギー部会とは、港区、愛育病院、東京ガスグループなどの関係者がエネルギーに関する合意形成や情報共有、確認、改善を行う、街区のエネルギーのいわば町内会である。

「このスマートエネルギー部会を通して、スマートエネルギーネットワークの計画段階から、計画、実行、評価、改善というPDCAサイクルをまわすことで、CO2の45%削減に向けて街区全体で取り組んでいるのです」

プロジェクトがスタートし、第一スマートエネルギーセンターからのエネルギー供給が開始されてから2年が過ぎた。需要側の港区からも、愛育病院からも、よい評価が得られているという。そして今、山本さんは、「スマートエネルギー部会を通した意思疎通で、まちを形成するエネルギーをつくる人と使う人がつながることが、円滑なプラント運営には重要だ」と、あらためて実感している。

つまり、スマートエネルギーネットワークの真の意味とは、ICTによるネットワークでまち全体のエネルギーの情報がつながるだけでなく、人と人のネットワークでもあったわけだ。

そして現在工事が進む駅に近い街区には、エネルギー供給拠点としての第二エネルギーセンターのほか、ホテル(2018年竣工予定)やオフィステナントビル(2018年度~2019年度竣工予定)など3つの建物が建つ予定だ。

田町駅東口北地区 2019年度完成イメージ

「新しい街区が完成すると、第二エネルギーセンターと第一エネルギーセンターが連携し、それぞれの街区でつくられたエネルギーを融通し合うことになります。SENEMSは2つの街区全体でエネルギーを最適化するものに進化します。これにより、これまで以上に、効率のよいエネルギー利用や強固なエネルギーセキュリティが実現することになります」

第一スマートエネルギーセンターでプラント内を見学した後、やがては田町駅までつながるという屋外の歩行者デッキに出ると、陽は大きく西に傾いていた。そこから、日に日に工事が進む新たな街区を望む。東京オリンピックを迎える頃にはもう、ここに新しいまちが完成しているに違いない。それまでは、いやそれからも、山本さんたちのまちづくりは続いていくのだろう。

「エネルギーは目に見えません。でも、エネルギーとまちづくりは密接に関係しています。このプロジェクトは、持続可能な新しいまちづくりに貢献できる仕事なので、やりがいがありますね。また、東京ガスグループがこうした都市インフラ形成にも携わっていることを多くの方に知っていただけるとうれしいですね」