ものづくりを支える職人技。
ガス工業炉に炎をともせ!

スマートエネルギーで社会を支える ミッションと技術者たち[3]

2017年03月01日

ものづくりに欠かせない工業炉を支える

愛知県東海市にある東邦ガスの技術研究所を訪れると、普段目にすることのないガス工業炉のバーナなどの設備が陳列された、天井の高い建物に案内された。

製造業などの都市ガスユーザーの工業炉担当者向けの講習などを行う施設だという。

工業炉とは、主に工業製品に使われる金属など特別な条件で加熱する「熱処理」によって、金属の性質を変化させる設備だと思えばわかりやすいだろう。

もちろん、ひと言で工業炉といっても用途によってその種類は多岐にわたるのだが、加熱する温度によって、高温、中温、低温の3つに大別されるという。

東邦ガス株式会社
産業エネルギー営業部
営業推進グループ
加藤謙さん

「たとえば高温の工業炉では、車のギア。
  ギアに使う金属を熱処理しなかったら、すぐに砕けたり、摩耗したりと使い物になりません。
耐久性や耐摩耗性を高めるために900度くらいまで加熱するのです。
  中温では、車のアルミホイールをつくるためにアルミの塊を溶かす工業炉など、低温では、服に使用される繊維を伸ばして乾燥させる工業炉などがあります。
  食品会社では大量にパンを焼くようなものまであるんですよ」

そう説明してくれたのは、東邦ガス・産業エネルギー営業部の加藤謙さん(28歳)。

まだ20代と若いものの、入社して10年、一貫してガス工業炉に携わってきた、その道の職人、スペシャリストである。

所属する営業推進グループは、電気やLPG、プロパンガスなどの燃料から、都市ガスへの切り替えを提案するのが仕事だ。

加藤さんは、クライアントの工業炉の省エネに寄与する自社開発の高効率バーナを担当し、その営業から技術提案、試運転、メンテナンス、フォローまでを一括して行っている。

ここで抑えておきたいのが、工業炉は、いわば容器となる炉と、炎を出して熱源となるバーナが組み合わさって一つの工業炉として機能するということだ。

炉本体をつくるメーカーだけで何十社もあり、バーナだけをつくるメーカーも多数存在する。

つまり、東邦ガスではこうした協力メーカーと連携しながら、ガス会社としてクライアントへの提案やサービス提供をしているわけだ。

だから、クライアント先で工業炉にトラブルがあった場合、通常はまず炉メーカーがメンテナンス対応をすることになる。

しかし、それがさまざまな理由で対応できないと、加藤さんたちガス会社の技術者が対応にあたることになる。

炉メーカー各社の工業炉について知識を身につける必要があり、炉メーカーとの緊密な連携が不可欠になることはいうまでもない。

そんななか、今度はガス会社として、いかに自社開発バーナを炉メーカーに採用してもらうか。

バーナを採用する炉メーカーはもちろん、エンドユーザーであるクライアントの双方に働きかけるのが、加藤さんのミッションなのだ。

加藤さんが担当する自社開発の最新バーナが取り付けられた工業炉

「すでに自社開発バーナで普及している種類がありますが、私が今担当しているバーナは、ようやく市場に出せるレベルになったばかりの新型で、まさにこれから普及させようとしているものです。

高効率でメンテナンス性に優れているのですが、販売実績はこれから積んでいきます。地道に種を蒔いていきたいと思っています」(加藤さん、以下同)

ガス燃焼の炎のことなら負けない自信と誇り

加藤さんは、入社してからの5年間、数々のクライアントの工業炉で、都市ガスへの切り替えやバーナの緊急メンテナンスを経験してきた叩き上げだ。

「入社したときは工業炉についてまったく知りませんでしたし、まさか自分がその仕事に携わるとは思ってもいなかったですね」と当時を振り返る。

炉が何台も稼働する工場内はとにかく暑い。

そんな現場にベテラン社員とともに足を運び、技術を体で覚えるという日々。

また、工業炉はクライアントに合わせてひとつひとつ仕様が違うため、汎用品のようにマニュアル通り修理ができないことが多い。

そのため、現場での瞬時な判断が問われる世界だった。

丁寧にガスの燃焼について教えてくれた。
燃焼に対するこだわりが伝わる。

「先輩には、計測データを重視する人と、炎の音や形といった感覚を大事にする人がいて、私はその二人から、それぞれの良さを教えられたと思っています」

ベテラン社員不在時に、若手同士でトラブル対応のメンテナンスにあたったときでも、不安を抱えながらも、少しでも早く復旧させたいという使命感があった。

「お客様の生産活動が止まっているなかで、いかに早くトラブルの原因をつきとめて直すかがポイントだと、昔から叩き込まれてきました。
  操業を止めるな、と。
  ですから、プレッシャーもありましたが、現場にいたときは、とにかくお客さんに迷惑をかけないことを第一に考えて、動いていましたね」

「今は営業・提案の仕事が中心なので、少しはそのプレッシャーから解放されました(笑)」と話す加藤さんだが、今、新たなプレッシャーに身を引き締めている。

そのひとつが技術の継承だ。

「現在、工業炉を担当する営業推進グループには技術者が20代と50代しかいません。
  私は入社10年目で中堅になりますが、ベテランが定年退職した後もその技術をしっかりと伝承していかなければいけません。
  また、我々の部署は最前線なので、技術者といっても時代の流れに柔軟に対応できるような、そんな嗅覚をもった人間であることが求められています」

ひと通り話をきいた後で、研修施設内でバーナを見せてもらった。

「ここがパイロットバーナといって、ここに火がつかないとバーナに火がつきません。試しにつけてみましょうか」

そう説明しながら、加藤さんは慣れた手つきで傍らの装置を操作し始めた。

炎が出ている先端部がバーナ。
この小さなパーツに高効率のガス燃焼の技術がつまっている。

すると、四角いブロックのようなものに空いた穴から、ゴーというガスが燃える音とともに、勢いよくオレンジ色の炎が吹き出した。

このブロックのような部分がバーナで、工業炉の大きさや温度などによって、取り付ける数が違ってくるそうだ。

「ガスは単体では燃えません。
  ガスと空気を混合することによって燃焼させるのですが、その混合比が適正かどうかは炎の色を見て調整することが多いですね」

つまり、炎の色を見て、ガス燃焼の良し悪しがわかるのだという。

よい炎とはいったいどんな炎なのか。

「言葉で説明するのは難しいということにしておきましょうか」と加藤さんは笑うが、そんなところはまさに、感覚を重視した先輩の背中を見て、受け継いだものに違いない。

「たかが炎ですが、この炎の良し悪しで中部地区のものづくりを左右しているのだと教わってきました。
  我々の営業推進グループのメンバー全員が燃焼に関しては、当社の中でもトップクラスだと思いますね」

自社バーナを開発し、ガス燃焼を知りつくしたガス会社だからこそいえる自信なのだろう。

 

 

■スマートエネルギーで社会を支える ミッションと技術者たち■
[1]ガス会社が取り組む厨房プロデュース 快適で効率的な調理空間をつくり出せ!
[2]ガス会社の省エネサービス最前線 進化するガス空調の遠隔監視システム
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