ガス会社が取り組む厨房プロデュース
快適で効率的な調理空間をつくり出せ!

スマートエネルギーで社会を支える ミッションと技術者たち[1]

2017年02月27日

社員食堂や病院の最適な厨房を提案する

ランチは社員食堂という読者も少なくないだろう。

「今日の日替わりメニューはなんだろう」「明日はアレを食べようか」などと考えることはよくあることに違いない。

しかし、その料理がどんな厨房でつくられているのかまで考えたことがある人は、ほとんどいないはずだ。

とはいえ、社員食堂の厨房もスタッフが働く仕事場であり、効率よく調理や提供ができる設備はもちろん、快適な環境が求められることはいうまでもない。

そんな最適な厨房づくりについて、日々頭を悩ませ、取り組んでいる人物がいる。

東京・汐留にある東京ガスの業務用ショールーム「厨BO!SHIODOME」。

最新の厨房機器が並ぶこの施設で出迎えてくれた、東京ガス・厨房相談室の太田英明さん(39歳)だ。

東京ガス株式会社
都市エネルギーマーケティング部
厨房相談室 主任
太田英明さん

「私が所属する厨房相談室は、一般飲食店をはじめ、社員食堂、病院、学校給食など、主に業務用厨房の支援をしています。
  厨房現場でのお困り事や要望を受けて解決するのが仕事です。
  お客さまの大半は企業や病院といった規模の大きな厨房設備を持つ方ですね」(太田さん、以下同)

たとえば、ある企業が新社屋を建設することになり、その社員食堂をつくる支援に携わることになったとしよう。

社員500食分をまかなう厨房だ。そのためにはどの程度のスペースが必要で、どんなレイアウトで、どんな厨房機器を揃える必要があるのか?

冷蔵庫の大きさは? 換気や空調は?……。

つまり、こうした厨房プランをトータルに考えて作成し、より効率的で快適な厨房図面や最適な厨房機器を提案するのが、太田さんの仕事なのだ。

「厨房内で働く人たちの効率や作業性、衛生面などを考えながら、厨房の提案をしています。
  ガステーブルやオーブン、冷蔵庫、揚げ物に使うフライヤー、食器洗浄機などの厨房機器はもちろん、換気や空調なども大事なポイントで、それぞれにクライアントのニーズに合った最適な提案を行っています。
  もちろん、すでに存在する厨房の改善提案や、最新の省エネ機器への入れ替え提案なども行っています」

このようにガス会社が厨房全体をプロデュースする強みは、あまたある厨房機器メーカーの機器のなかから、中立的な立場でクライアントのニーズに合った機器を選んで最適な厨房を提案できるというところだ。

そのため、一方ではつねにメーカーと連携・協力しながら、仕事を進めていくことが重要になる。

また、ガス会社ならではのガス空調も合わせた提案ができるのも特長だ。

「お客さまによって、厨房のスペース、作業動線、作業環境、省エネといった厨房に求める優先順位も異なります。
  だから、外食チェーン店で何もかも同じようなケースを除けば、一つとして同じ厨房はありません。
  いくつかのパターンのなかから当てはめることができないので、すべてオーダーメイドといっていいでしょうね」

1案件の仕事は、機器の入れ替えなど半日で終わることもあるが、厨房の全面改修や新規案件などでは数カ月~数年かかることもあり気の長い仕事なのだという。

最新の厨房機器を駆使して環境を改善

太田さんは大学卒業後、厨房機器のメーカーに入社。

その後は、一貫して厨房の作業動線や機器の配置を考えて厨房図面を作成する部署に所属。

一から学びながら技術を身につけ、一級厨房設備士や一級厨房設備施工技能士などの資格も取得した。

「大学は工学部機械工学科なんですが、飲食店でアルバイトをしていたこともあり、厨房機器に興味があって入社しました。
  メーカー時代は年間100件くらいの図面を手がけていたので、今思えば、そのときにさまざまな物件を担当した経験が力になっていますね。
  サービスエリアのフードコートの仕事などは、規模も大きくて、思い出深い仕事でした」

東京ガスに入社したのは3年前。

「ほかに役に立てるところがない」と本人は笑うが、まさに適材適所で現在の厨房相談室に配属された。

スチームコンベクションオーブンは、煮る、焼く、蒸すが1台でできてしまう調理機器。

「仕事は大きく変わりませんが、換気・空調も含めた提案をすることが増えました。
  また、メーカー時代は自社の機器を多く扱っていましたが、今ではメーカー各社の機器を知らないといけません、厨房機器は日々進化していますから。
  でも、そのおかげで、かつてはできなかった最適な厨房のレイアウトが、さまざまなメーカーの最新機器を使うことで可能になるということもありますね」

厨房といえばガスというイメージをもつ読者も多いと思うが、厨房のガス機器の一番の魅力は、やはり炎だと太田さんはいう。

「強火からとろ火まで、調整が自由に簡単にできますし、中華料理では圧倒的な火力で一気に短時間で仕上げますから、必要以上に水分が失われないのでジューシーに仕上がります。
  それにやっぱり、ご飯です。
  ガスの強い火力でお米の一粒一粒を加熱して、ねばりのある、うまみのあるご飯が炊けますよね」

コスト面でも、イニシャルコストやランニングコストが電気に比べて抑えられるというメリットもある。

さらに最近の機器は、労働環境や衛生環境に配慮したものが次々と登場しており、太田さんも提案の際にはこうした働く環境を重視しているという。

学校給食などに使われる調理釜。二重の断熱構造になっていて、釜の表面に熱が伝わりにくい。

「厨房内は暑いという声を本当によく聞きます。
  調理するときの炎の直接的な熱だけでなく、たとえば稼働している加熱機器の表面から放出される輻射熱や、洗浄機から出る蒸気も、厨房内を暑くする要因になっています。
  これまではその熱への配慮がされてきませんでしたが、今では熱を抑えたり、有効利用するような機器が登場しています」

たとえば現在、「涼厨(すずちゅう)」という厨房機器シリーズの採用実績が伸びている。

このシリーズは統一規格にもとづいて各メーカーがそれぞれ製作・販売しているもので、厨房機器が発する輻射熱を低減し、集中排気する事で快適な作業環境を実現するとともに、空調負荷を低減し、節電にも貢献してくれる。

「また、滑りにくいだけでなく清掃がしやすい床材など、衛生面での提案も重要なポイントになりますね。
  近年では、調理の現場で労働力不足が問題となっていますが、人員確保のためにも労働環境の改善が求められる時代なのだと思います」

厨房という狭く限られた空間のなかで、作業動線も考えながら、どうやってレイアウトを組んでいくか。

それに見合った機器も探さないといけないが、それこそ組み合わせは幾通りも存在する。

「10人のお客さまがいれば、10通りの厨房ができ上がります。
  本当に正解がないのかもしれません。
  しかも、作成した提案図面を、試しにつくって確認することはできません。
  施工して厨房が完成するまでは、落ち着かないこともあります。
  でもだからこそ、お客さまが求めているニーズをしっかりと聞き出すとともに、コミュニケーションをとりながらひとつひとつの課題をクリアしていくことが、いい厨房をつくるためには大切だと思っています」

そうやって導き出した自分の提案が、クライアントに受け入れてもらえて形になったときには、やはりやりがいを感じると太田さん。

「ただ私たちにとって、本当に成功したといえるのは、お客さまから『また手伝ってくれますか』といわれたときじゃないですかね」。

 

 

■スマートエネルギーで社会を支える ミッションと技術者たち■
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