世界トップ企業が加盟する「RE100」、日本企業が「再エネ100%」を達成するには?

山口岳志 日立コンサルティング エネルギーコンサルティング本部 マネージャー,スマートジャパン

2019年01月18日

ii)J-クレジット(再エネクレジット)とは?

「森林整備によるCO2吸収」や「機器の効率化によるCO2削減」などのプロジェクトによって生まれた温暖化ガスの削減量を数値化し、市場で売買できる仕組みを「クレジット」と呼ぶ。京都議定書以降、日本では経済産業省管轄の「国内クレジット」環境省/農林水産省管轄の「J-VER」の2つのクレジット制度が並立していたが、2013年に3省が合同で「J-クレジット」制度を立ち上げ、現在まで運用されている。このうち「再生可能エネルギー導入」に関するクレジット(通称「再エネクレジット」)に限り、CDP、RE100でグリーン電力証書と同じように用いることができる仕組みが最近になって整えられた(クレジットはkWh当たりではなくCO2削減量のトン(t-CO2)単位で販売されるため、注意が必要)。SBTについては、まだ正式なコミットメントはないものの、SBTが準拠する先述のGHGプロトコルにクレジット活用に関する記載があるため、SBTでも用いることができるという前提で調整が進んでいるようである。

J-クレジットは、温対法によって電力事業者の排出係数(電力消費量1kWh当たりCO2を何kg排出したか、という値)の調整にも用いることができるため、2016年の電力自由化以降、新規参入した電力小売り事業者によってJ-クレジットが大量に買われており、需要が供給量を大きく上回っている状態である。年に数回、J-クレジット事務局によって政府保有クレジットなどの入札販売が行われているが、3年ほど前は500円/t-CO2程度だった平均価格が、現在では1700円/t-CO2(再エネクレジットの場合)ほどに高騰している。入札が行われるごとに入札者・入札総量ともに増加の傾向が続いており、今後も価格上昇は続くと思われる。

現在のJ-クレジット平均価格を1kWh当たりに直すと0.85円であり、グリーン電力証書に比較するとはるかに安い(後述する非化石証書と比較しても、J-クレジットの方が今のところ安価である)。発行量も、太陽光発電プロジェクトの認証量が年間およそ50万t-CO2(約10億kWh)程度あることから、グリーン電力証書の数倍の規模を持っている。J-クレジットはプロバイダを介して基本的に誰でも購入ができるため、価格的にも供給量的にも最もハードルが低い証書であるといえる。次回入札は2019年の2月頃に開催予定である。


iii)非化石証書とは?

非化石証書は、日本における非化石電源の比率を高めることと、FITに由来する国民の再エネ賦課金の負担額を軽減するため、2018年から国によって開始された新しい制度である。運営主体は資源エネルギー庁になる。注意点としては、一般消費者は非化石証書を購入することができず、電力小売事業のみが購入可能である。従って、一般消費者は通常の電力と非化石証書を組み合わせた「再エネ」電力メニューを購入することによって非化石証書を間接的に購入することになる(方法2.と同様)。

この非化石証書だが、グリーン電力証書やJ-クレジットと異なり、FITとして系統に流れた再エネ電力の環境価値を分離して証書化するため、発行量が非常に多い。2016年度のFIT電力買い取り量から試算すると約570億kWhの共有ポテンシャルがあると目されており、電力事業者であれば問題なく必要な量を調達できる。一方で、この非化石証書は今後非FIT電源(大型水力、原子力)を対象に含む予定となっていることから、RE100を推進するグローバル企業からは敬遠されているのが実情である。それ以外にも非化石証書には下記のようなデメリットがある。

●トラッキングシステムが整備されていないため、どこでつくられた再エネ電力なのかを示すことができない
●最低入札価格が1.3円/kWhと固定されており、この単価以下の価格では買うことができない
●制度が始まったばかりであるため、制度設計上、未決定の部分がある(原子力の扱いなど)

特に1番目については重要で、「標準化された認証情報の記載」がRE100のクライテリアに定められている以上、電源が特定できない現状の非化石証書の仕組みがそのままRE100に受け入れられるかは疑わしい。

各証書の価格を高い順に並べると グリーン電力証書(3円/kWh)>非化石証書(1.3円/同)>J-クレジット(0.85円/同)の順になる(2018年8月時点)。ただし、前述の通りJ-クレジットは今後価格上昇のリスクがあるため、将来にわたり価格が安定していると思われる非化石証書は、調達する側からみれば魅力的だろう。もしRE100に加入する予定がないのであれば、非化石証書は高い経済合理性を持った証書であるといえる。今後非化石証書を活用した「再エネ電力」メニューはさまざまな電力事業者から提供されるようになるだろう。

各証書の特徴(2018年8月時点の情報を基に筆者が作成

最終回となる次回では、多くの機関投資家がESG分野における企業価値を測る一つの重要指標としているCDPの回答に対し、どのようなアクションが取られているのか、最近の傾向を踏まえて解説する。

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