日欧がモデル条項示す
仕向け地制限撤廃に向け―LNG

2018年11月29日

LNGの主要な買い手である日本と欧州は、政府当局が協力し、LNGの円滑な仕向け地変更を可能にするための売買契約に関するモデル条項案を作成した。買い主がLNGの仕向け地変更を求めた場合、売り主が船を手配し買い主の港まで持ち届ける契約(DES方式)であっても、一定の条件さえ満たせば、売り主は迅速に対応しなければならないと明記し、この条件を具体的に示した。今後、日欧以外の法律専門家も交え、条件に関する合理性と必要性についての議論を深めていく。同条項が業界標準として参照されることで、LNG市場の流動性が高まると期待される。

経済産業省と欧州委員会は昨年7月、「柔軟で透明性の高いLNGのグローバル市場の促進・確立に関する協力の覚書」(LNG協力に関する覚書)を締結した。モデル条項案は、この取り組みの一環として、両者が設置した日欧の法律専門家によって作成された。

モデル条項案は、公正取引委員会が昨年6月にまとめた報告書の考え方に沿っている。報告書では、売り主がLNGの荷揚げ地を制限する仕向け地条項等は、自由な競争を妨げ、独占禁止法に抵触する恐れがあると指摘した。売り主が買い主の仕向け地変更を拒む必要性と合理性が認められない限り、仕向け地の制限は、競争法上問題があるとしている。

モデル条項案では、買い主には仕向け地変更を要求する権利があると明記した上で、売り主は一定の条件を満たす限り、仕向け地変更を迅速に承認しなければならないとしている。

一定の条件とは、買い主が売り主に対して、仕向け地変更先の港湾規則及び使用条件の写しを提供し、売り主がこれらを受領することのほか、売り主が輸出入に関する必要な政府承認を得られること、売り主が、当該仕向け地変更が安全な方法で遂行されると納得すること、LNGの品質が仕向け地変更先の技術的な要求水準に対応していることなど計7項目からなる。売り主が仕向け地変更に異議を唱える場合は、売り主が「条件を満たさない理由」を説明する責任を負うとしている。

〇必要性と合理性
LNGの輸送方法は、買い主が船を手配してLNGを引き取るFOB方式と、売り主が船を手配して買い主にLNGを持ち届けるDES方式に大別される。
そもそも買い主がLNGを輸送するFOBでは、売り主が仕向け地を制限する必要性や合理性はないと考えられる。DESでは仕向け地変更に伴って売り主に追加のリスクやコストが発生する場合があり得るため、売り主が買い主にその精算を求めることには必要性と合理性が認められる場合がある。

そのような追加コストとリスクを精算する方法としては、当該金額が算定可能であれば、その金額を買い主が売り主に支払う補償方式を用いる。金額の算定が困難な場合は次善の策として、転売で買い主が得た利益の一部を売り主に分配する利益分配方式(PS方式)を用いる。売り主と買い主は仕向け地変更の都度、このいずれかを合意して決めることを記載している。ただし、PS方式で売り主に分配される金額は、追加コストやリスクの精算方法として必要性と合理性が認められる範囲となる。

また、モデル条項では、売り主の仕向け地変更の拒否の正当性や、利益分配方式の金額の正当性を検証するために、弁護士や会計士など第三者の専門家を起用できる手続きも定めている。当事者が合理的な行動をとるように促す狙いだ。


〇「議論を深化させ条項の充実を」
法律専門家グループのメンバーとして、モデル条項案の作成に関わってきた西村あさひ法律事務所の紺野博靖弁護士は、モデル条項の意義や今後の見通しについて次のように話している。
モデル条項は、仕向け地制限に必要性と合理性が認められない限り、売り主は買い主からの仕向け地変更の要求に速やかに応えなくてはならないことを、公正取引委員会の報告書の考え方を踏まえて示したものだ。

契約更改や新規契約をする際のみならず、既存契約における仕向け地変更の運用においてもこれを参照してもらうのが狙いだ。
仕向け地制限はFOBでは認められないが、DESなら広範に認められるという誤解があるようだ。公正取引委員会の報告書が仕向け地制限の合理性と必要性が認められる例としてあげているのは、(1)船陸整合性(船と桟橋の大きさが合わないなど)が取れていない、(2)追加コストを買い主が精算しない、(3)船のスケジュールが間に合わない―の3つだけだ。

DESのPS方式についても、公正取引委員会の報告書で合理性と必要性が認められている例としては、仕向け地変更に伴って売り主に追加で発生するコストとリスクの算定が困難な場合しか挙げていない。

これらの点に留意しておかないと、思わぬところで売り主には独占禁止法上の疑義が生じかねないと心配している。そういった観点でもモデル条項が参考になる。必要性と合理性が認められる「例外」について今後議論が深まることを期待している。モデル条項は「案」ではあるが、骨子は固まっている。今後、他の国の法律専門家の意見も取り入れられて、さらに充実していくのではないか。

(「ガスエネルギー新聞」11月26日付)

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