米産LNGに追い風 原油高騰で競争優位に

2018年05月18日

原油市況が上昇傾向を強めている。米原油先物(WTI)は10日(現地時間)、1バレル71・36ドルに上昇、2014年11月以来、3年半ぶりの高値水準となった。昨秋以降の石油製品需給の引き締まりに加え、8日に米国がイラン核合意離脱を表明し、地政学的リスクの高まりから市況上昇に弾みがついた。日本はLNGの大半を原油価格連動で輸入しており、原油高騰はLNG輸入コストの上昇につながる。こうした中、原油リンクではない米国産LNGに注目が集まっている。米産は価格が低位安定しており、原油高騰局面では競争力が相対的に高まる。日本のガス・電力会社は今年から米産の調達を本格化させる予定で、中期的に原油高騰リスクの緩和効果が期待される。(ガスエネルギー新聞 大喜多 輝雄)

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原油市況上昇の背景にはOPEC(石油輸出国機構)協調減産による需給の引き締まりがある。経済混乱で加盟国ベネズエラの生産量が急減した影響もあって、目標以上に減産が進んでいる。そこに米国によるイラン制裁問題が浮上し、中東地域の不安定化が懸念される事態となった。

協調減産を主導するサウジアラビアは、国内改革を推進する原資として1バレル80ドル以上の原油価格を望んでいるという。国営石油会社サウジアラムコの株式上場も控え、企業価値の向上につながる原油価格の上昇は都合が良い。このため協調減産は基本的に維持されるとみられる。

さらに、世界最大の石油消費国である米国は、5月末からドライブシーズンに入る。7月頃までガソリン消費が膨らむため、石油製品市況が上がりやすい状況が続く。

今後の原油市況について石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の野神隆之主席エコノミストは、7月には1バレル75ドル以上に値上がりする可能性が高いと見る。

「原油高を受けて米シェールオイルの生産量は増えるが、それを上回るペースで制裁を受けたイランの輸出量が落ち込む可能性がある。米国の夏場の需要が一巡すれば上値は重くなろうが、中東に火種が残る限り市況の高止まりは続く」

米ガスは低位安定

こうした中、脚光を浴びているのが、米国の天然ガス市場価格(ヘンリーハブ)に連動させる米産LNGだ。米ガス価格は09年以降、低位安定が続いている。この間、季節需要によって上げ下げはあったが、基本的にシェールガスの増産で上値は抑えられてきた。この1年間では、原油価格が約1・7倍に値上がりしたのに対して、ガス価格はむしろ若干下がっているほどだ。

米産LNGは16年にサビンパスプロジェクトが出荷を開始し、17年の同国の輸出量は約1200万tに達した。今年は二つ目のプロジェクト、コーブポイントが出荷を開始した。同案件から東京ガスは年140万t、関西電力は住友商事を通じて年80万tを引き取る契約を持つ。さらに、今年後半以降、大阪ガス、東邦ガス、JERA、東北電力などが購入契約を持つフリーポート、キャメロンが操業を始める予定だ。この先、米産の輸出量は18年、19年と1000万tずつ積み上がると予想されている。

米ガス市況について野神氏は「輸出用にガス需要が増えても、シェールオイル随伴ガスの生産量も増大していくため、上値の重い状況は当面続きやすい」としている。

米産LNGは、原油価格がおおむね1バレル60ドルを超えると原油リンクより割安になるとみられている。原油が1バレル100ドルを超えていた数年前、日本のLNG輸入価格は百万BTU(英国熱量単位)当たり14~17ドルに高騰していた。当時、米産は原油リンクよりも3~4割安くなると試算されていたが、その後、原油は大きく下がり、昨年半ばまで40~50ドル台で推移した。その間は原油リンクの方が米産より計算上安くなっていた。このように市況次第で状況は一変するが、異なる価格メカニズムの契約を併せ持つことはリスク分散が図れる点で意義が大きい。米産の出荷本格化が期待されるゆえんである。

(ガスエネルギー新聞5月14日付)

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