東京電力の対応に小売電気事業者の不満、協定完了は2割強にとどまる

石田雅也,スマートジャパン

2016年09月20日

小売全面自由化に伴う東京電力のシステムに不具合が発生している問題で、電力使用量の通知が遅延する件数は今なお2万件近くにのぼる。4月・5月分は約3000件の電力使用量を確定できない状態だ。東京電力は使用量を決める協定を小売電気事業者と結ぶ方針だが、全件の締結には時間がかかる。

既報(7月27日):「東京電力のシステム不具合は原因を特定できず、問題解決は10月以降に

続報(8月24日):「東京電力のデータ通知の遅延は改善せず、年内の問題解決むずかしく

東京電力グループの送配電事業会社である東京電力パワーグリッド(東京電力PG)は電力使用量の通知が遅延している問題に関して、定例の進捗報告を8月5日に電力・ガス取引監視等委員会に提出した。家庭向けを中心に電力の需要データの通知が遅延している件数は8月2日の時点で1万9715件にのぼり、すでに2カ月以上も続いている遅延の状況は収束していない(図1)。

図1 需要データの未通知件数の推移(画像をクリックすると拡大)。出典:東京電力パワーグリッド

需要データの遅延は東京電力から小売電気事業者へ契約を切り替えたケースで発生している。東京電力PGのシステムにさまざまな不具合が発生して、検針日から1カ月以上を経過しても使用量を確定できない状態だ。ようやく4~6月分の遅延が徐々に解消する一方で、新たに7月分の遅延が増え始めた。

しかも4月分と5月分の検針データのうち、使用量を確認できない件数が約3000件も残っている。小売電気事業者は顧客に電気料金を請求できず、事業運営に支障をきたしている。東京電力PGは小売電気事業者と協定を結んで使用量を確定させたい意向だが、小売電気事業者の多くは承諾していない。

8月3日の時点で協定の対象になっている2996件のうち、東京電力グループの小売事業会社である東京電力エナジーパートナーの顧客分が2350件、そのほかの小売電気事業者の顧客分が646件ある(図2)。東京電力エナジーパートナーの顧客を対象にした協定が完了した件数は966件で、それでも41%の状態だ。他の小売電気事業者とは23%しか協定を締結できていない。

図2 小売電気事業者と締結する協定の進捗状況(4月・5月分)。出典:東京電力パワーグリッド

東京電力PGが進める協定の基本方針では、顧客ごとに前年度の実績値をもとに、未確定になっている今年度の使用量を決める。しかし東京電力の従来のメニューから変更した顧客の多くは電気料金の削減を目的に契約を切り替えた。節電にも取り組んでいるため、前年度と同様の使用量を提示されても受け入れがたいのは当然だ。顧客の不満は東京電力PGではなくて小売電気事業者に向けられる。

小売電気事業者が東京電力PGに伝えた現状は深刻だ。契約を変更したことが原因とみなされて、顧客の離脱につながる可能性があるばかりか、新規顧客の獲得にも影響が出かねない。小売電気事業者のあいだでは東京電力PGに対して損害賠償請求を検討する動きも始まっている(図3)。

図3 小売電気事業者からの主なクレーム。出典:東京電力パワーグリッド

東京電力PGは小売電気事業者の顧客に対して、お詫びの文書を送付するなどの対応を進めている。顧客からの問い合わせを受け付ける専用の窓口も設置したが、わざわざ東京電力PGに連絡してくる顧客はそう多くないだろう。小売電気事業者と顧客の双方の不満を解消する対策として十分とは言いがたい。

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