デジタル時代のエネルギー変革
ITがもたらす新しい社会

2016年09月09日

電力小売市場が自由化され、早くも4ヵ月が経過した。

来年4月には都市ガス小売市場の完全自由化も予定され、新たなビジネスモデルの可能性が期待されている。

デジタル時代のエネルギー変革にともない、日本の社会はどう変わるのか。

未来へのビジョンを、「スマートコミュニティ」の提言で知られる東京工業大学の柏木孝夫特命教授に聞いた。

世界が注目!デジタル時代初となる日本の電力自由化

2016年4月に電力の小売市場が全面自由化され、家庭部門を中心とする約8兆円もの市場が新たに開放された。

来年4月には、都市ガス小売市場の全面自由化も予定され、日本は大きなエネルギー変革の時期を迎えている。

東京工業大学 特命教授
柏木 孝夫氏

エネルギーシステム研究の第一人者として、国のエネルギー政策にも深く関わる柏木孝夫特命教授は、「インターネットとエネルギーが一体化したデジタル時代の日本の電力自由化に、世界中が注目している」と見ている。

「電力の自由化に関しては、イギリスが1990年代にいち早く手がけ、1999年に完全自由化を果たしています。
  ドイツは1998年に全面自由化を果たしました。
  それに比べ、日本の電力自由化は遅れている、と言われることがありますが、私はそうは思いません。
  イギリスやドイツが自由化したのはアナログの時代ですが、日本の自由化は、デジタル時代に入ってから。
  つまり、インターネットとエネルギーが一体化した時代に最初に自由化する国が日本なのです。
  この世界の先駆け的な存在である日本の動向に、今、世界は注目しています」(柏木特命教授、以下同)

21世紀に急速な発展を遂げたインターネットの普及により、ICT(情報通信技術)を駆使したデマンド制御が可能になり、IoT(モノのインターネット)技術も格段に進歩した。

インターネットとの一体化により、電力のように、きめ細かな制御を必要とするシステムのデマンドをコントロールできるようになったことは、社会へも経済へも大きなインパクトがあると、柏木教授は指摘する。

「“デジタル革命”がエネルギー分野と融合することで、スマートコミュニティの実現も見えてきます。
  日本の自由化に、世界が新しい時代のエネルギービジョンを期待しているのは間違いありません」

電力自由化でスマートコミュニティの時代へ

自由化により、エネルギーシステムは大きく変わろうとしている。

「これまでは“需要ありき”でピークに合わせた電源開発をしてきました。
  その結果、最大手の東京電力の場合、年間稼働率がわずか1%しかない電源を、全体の7~8%も所有する事態になっています。
  これはどういうことか。
  たとえば100台のトラックを所有する運送会社があったとします。
  ですが、そのなかで年間に3日間しか動かないトラックが7〜8台あり、そのために高い保険やメンテナンス、専用ドライバーの費用をかけていたらどうでしょう。
  その会社の経営が苦しくなることは明らかですよね」

工業国家の成長段階にあった今までは、この“需要ありき”の安定供給のみを追求したやり方でもよかったが、工業国家から文化国家へ成熟した現代においては、このピークに合わせた大規模電源の立地はかえって非効率となる。

「工業国家の成長段階では、“需要ありき”で、大規模な電源開発は安定的で安価な電力供給に不可欠でした。
  ただ、市場が成熟した今の日本では、電力需要のピークの時間も量も当時とは大きく変化しています。
  工場は朝から晩まで休みなく稼働しますが、オフィスや家庭の場合、電力の使用時間は日中特定の時間帯に偏ります。
  ピークの質と量が変わったのに、これまでと同じようにピーク時に合わせた電源開発を続けた結果、稼働率たった1%のシステムが7~8%の電源を構成する歪な事態を招いたのです」

こうした非効率かつ高コストな“需要ありき”の現状は、デジタル時代の自由化による“デマンド(需要)コントロール”で解消できると柏木教授は展望を述べる。

「電力市場が自由化された今、“需要ありき”の考えはもう通用しません。
  需要のピークをコントロールして大規模発電所にピークを与えないよう、負担を平準化するシステムに転換していくことが、今後は求められていくでしょう。
  そのためには、需要地にきめ細かなエネルギーのコントロールマネジメントができるコミュニティを作ることも重要になってきます。
  それが、私の提唱するスマートコミュニティです」

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