オリンピック開催で求められる
安全・安心、持続可能な街づくり

提供元:エネルギーフォーラム2014年9月号

2014年11月04日

東京でオリンピック・パラリンピックが開かれる。施設の建設などで都市は大きく変貌しそうだが、大切なことは大会を成功させることだけでなく、五輪開催を契機に、東京を環境に優しく、安全・安心に住める街にすることだ。街づくりについてさまざまな分野の第一人者が、これからの東京の在るべき姿を語り合った。

伊藤 滋
「五輪で水素社会を実現していく戦略は面白い」 1962年東大大学院博士課程修了。81年東大工学部教授。慶大、早大などで教べんを取り現在、伊藤滋都市計画事務所主宰

伊藤 2020年に東京でオリンピック、パラリンピックが開かれます。好景気を期待して建築業界や土木業界は浮かれ気味ですが、本当に問われているのは、首都直下型地震もあり得る中で今後20~30年後に向けてどう都市をつくっていくかです。あるいは、例えば温暖化防止のためにどうCO2排出を減らして、環境に優しい街をつくっていくかだと思います。まず安さんの考えをお聞きしたい。

 IOC(国際オリンピック委員会)は開催都市を決める条件のひとつとして、オリンピック・パラリンピックを契機に「レガシー」として、その都市に何が残るのかを重視しています。レガシーには、良い遺産、悪い遺産、目に見える遺産と見えない遺産がある。目に見える良い遺産が多く残る招致計画を提出した都市が開催地として選ばれることになっています。その点で東京は、マドリードやイスタンブールに比べると圧倒的に有利でした。しかし、今までの開催都市で、本当に良いレガシーが構築されているかと言うと、なかなか難しい。

伊藤 確かに直近のロンドンも、今はオリンピックの敷地の中に新しい建物が立っているだけで、周辺はあまり変わっていません。

安 昌寿
「緑や水、生物を意識したインフラづくりを」 1975年京大大学院修士課程修了、日建設計入社。2001年執行役員東京副代表、06年副社長、14年1月から現職

 北京大会は1964年の東京オリンピックと同じように国の威信が最優先されましたし、ギリシャ大会は整備した競技施設などは廃墟になっています。64年の東京大会では、駒沢オリンピック公園など評価が高いものがありますが、すばらしい水路網を破壊したとか、増上寺や明治神宮の一帯をスポーツ施設のための都市公園にしたり、軒並みホテルを建てて景観を損ねたとの批判も出ました。そう考えると、良いレガシーとして何を残していくべきか、今はそれを考えるラストチャンスだと思います。

大野 私は東京都が招致を言い出した06年に都の環境対策の部長として、前年にオリンピック開催が決まったロンドンの視察に行ってきました。もともとIOCは、環境問題を考慮していませんでした。
 しかし、1970年代、80年代に入ると、「わずか2週間くらいの開催のために地域の環境を破壊していいのか」と問題になってきた。90年代になってから、IOCも「このままではいけない」と考えるようになって、96年にオリンピック憲章を改正し、環境を五輪開催の中でスポーツ、文化と並ぶ第3の柱に位置付けました。環境の位置付けも2つあり、最初は開催期間中に施設などをつくることが地域の環境を壊さないという視点だけだったのが、2000年に入ってからは、開催を契機にしてその開催地がより環境に優しい都市になるという視点が加わりました。IOCのガイドラインにはこうした規定がされましたが、それらが実際に実現するかは開催都市の姿勢にかかっています。
 振り返ってみると、今までの開催地の中で及第点、あるいはプラスに評価されているのはロンドンだけだと思います。それを引き継いでおこなわれる東京では、ロンドンを超えるものにすることが求められています。

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